立ハゼ葺き(立平葺き)も瓦棒葺きと同じく先端にリスク有り!

木造

立平葺きの軒先雨浸入事例が多く報告されていますが、ハゼ葺きのような鉸め部分が狭い場合でもどうやら雨浸入リスクは免れないと言えそうだ。

ご承知のようにハゼ部という部位は板金部材の接続部分ですので慎重な雨仕舞処理が求められます。写真の状況はハゼ部分の先端であるため部材同士の隙間が発生しています。然るべき屋根勾配が確保されている場合、このような状況でも大きな弊害はないと考えられます。仮に雨が浸入したとしても、雨が止めばすぐに当該隙間から排出されるはずだからです。

しかし、こと緩勾配屋根の場合は状況が異なります。浸入した雨は唐草周辺に回り込み唐草固定用の釘などから更に浸水し下地の木材などに影響を与えます。いずれ釘周辺の木材は腐食し釘の固定力を奪います。夏場の熱射の影響などで板金が反り返ることで釘は木材から抜け出てきます。その繰り返しによって屋根板金の先端付近は固定力を失い屋根の反り返りを助長します。かくして、緩勾配の板金屋根には水溜りが発生し、隙間の開いた屋根の先端では雨の浸入リスクが高まります。

居住空間を優先した結果、「軒ゼロ」住宅や「緩勾配屋根」が考えられたと思われますが、その設計にはそれなりのリスクが伴うということを忘れてはいけません。建材はいつしか必ず劣化します。建材の性能だけに頼った建物は建材の経年劣化に伴いリスクが高まっていきます。

最近の建物の雨漏り原因の多くはこういった無理を押して設計された部位から多く発生していると感じています。今こそ、雨仕舞の基本に立ち返って建物を見つめ直すことが求められているのではないでしょうか。