だって お互い様じゃないですか

雨漏り調査,木造,外壁FRP防水,サイディング,二次防水層,水切り金物

既に別の業者さんによって散水調査を実施したことがあるという事で、その時の状況をオーナー様から聞き取り調査で確認した後、まずはその時に調査しなかった部位から今回の散水調査を開始しました。

浸出部位の直上部付近各所(床、巾木、水切り金物付近、内壁サイディング、笠木内側、トップレール、笠木外側、手すり外部側サイディング)は既に調査対象として数時間の散水調査が行われています。よって、横移動してくるであろう経路を想定し被疑箇所を数か所設定しました。その推測箇所の中でも下方にあるバルコニーの床面付近からの浸水の可能性から検証しました。

床面への散水で雨漏りは再現されませんでした。次に壁面付近の可能性を検証します。
ちなみに水切り金物は写真のように機能しています。水切り金物内の防水立上り端末が多少浮いている所があって気になりましたが、たとえ強風を伴ってもその位置まで雨が到達する可能性は低いと判断しました。

一つはっきりした事は、バルコニーのFRP防水は水切り金物取付け後に塗布されているようでした。下から覗くとFRP防水の端末が水切り金物の手前で止まっているのがはっきりと確認できたからです。そして、FRP防水の表層はモルタル塗り(薄い…)でした。

 

 

水切り金物とサイディングとの隙間内の状況から判断するにサイディングは下地の合板に釘で直貼りされているようです。釘の廻りに怪しい箇所は見当たりません。ちょっと気がかりなのが透湿防水紙の気配が感じられないという事でした。
更に、水切り金物の上部に雨が吹付けたとしても雨が水切り金物の立ち上がりを越えることはないと判断しました。

となると、次の被疑箇所はサイディング面になります。釘周りに怪しい所がないのでサイディングの重ね部分である縦目地付近に散水していきます。縦目地は数本あるので浸出箇所近くから始め順次離れる方向で進めて行きました。

何か所目かの縦目地に散水してから数分後、小屋裏内の雨染み位置から雨漏りは再現されました。

 

散水箇所と浸出箇所は横方向に約1.5m程度のズレがありました。

雨漏りの原因、そして、ズレの原因は何だったのでしょうか。

 

サイディングの裏面に浸入した雨はサイディングと合板との隙間内で行き先を探っています。釘止め付近は隙間が密で移動しにくいようです。釘止めの無い部分をすり抜け水切り金物の立上り(返し)に到達した雨は水切り金物の厚み分だけ存在するサイディングと合板の隙間で広がりつつやはり水切り金物と合板との隙間を下方に移動して行きます。そして、FRP防水立上りにあった浮き部分に浸入を試み成功します。FRP裏に浸入した雨は床の合板と壁の合板の入隅を水勾配に従って下方に移動し然るべき位置から小屋裏に浸出せしめたのです。

雨がここに到達するまでにいくつかの関門があるはずでしたが今回はそれがありませんでした。

①サイディングを縦使いする事で重ね部分が横方向からの雨や風を伴なう雨に対し脆弱になっていた。
②透湿防水紙が取付けられていない。
③FRP防水層の立ち上がりに浮きがあった。また、水切り金物とFRP端末取合いの処理に問題があった。

この事例では、サイディングの縦目地をシーリングなどで止水すれば一先ず雨漏りは止まるでしょう。しかし、そういった簡易的な補修では材料の劣化や建物の挙動などにより必ず再発します。少し大変ですがこの機会に二次防水の改善を含めた修繕を実施し大切な建物の耐用年数を復活させる事をお勧め致します。

 

そもそも、二次防水層が無いこと自体が不自然です。一次防水(壁ではサイディングやモルタル等、屋根では瓦やコロニアル等、外観的な仕上げ材)と二次防水(壁では透湿防水紙やアスファルトフェルト等、屋根ではアスファルトルーフィングやゴムシート等、外観からは見えない)はそれぞれが別々の責任を担っている一対のものです。どちらかが存在しないという事は基本的には考えにくいのです。

意匠的外観は元より一次防水の役目としては二次防水を紫外線や直接的風雨などから保護せしめる事です。仮に一次防水が無かったとしたら二次防水は紫外線の影響をもろに受け瞬く間に使い物にならなくなることでしょう。そして、一次防水には必ず継ぎ目や隙間がつきものですから雨は少なからずそこから浸入してしまいます。劣化が進めば尚更です。そこから浸入して来る雨を食い止め建物を守ることが二次防水の役割です。どちらかが無くても建物を雨から護ることは困難になるでしょう。

一次防水と二次防水、見た目も役割も違いますが一対で存在してこそ役目を全うできるのです。お互いに補っているのですね。

Posted by kensuiprotect