読んで字の如く 「水切り目地の働き」とは

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RC(鉄筋コンクリート)造のイメージは?と聞かれて何を思い浮かべるでしょう。「固い」、「丈夫そう」、「重厚感(重い)」、「建築費が嵩みそう」、などいろいろ感じると思います。しかし、そういった見た目のイメージの割には自由な形状のRCの建物が多く見受けられます。ドーム状の屋根や曲線を強調した外観など多種多様な設計が試され建築されて来ました。

昨今は木造建築に於いても奇抜な形や素材を駆使した建物が流行っていたりしますが、RC造と比較した場合、どちらかと言えば木造建築は日本古来の仕様を踏襲しています。その中の一つが雨仕舞だと思います。決して省いてはならない工程や納まりがそこにはあって、細部においても全体においても建物の形そのものが機能的に働いていると言えるでしょう。特に雨仕舞は建物を雨から護る知恵であり末永く住むためには必要不可欠なもので未来まで伝えていかなくてはなりません。

ところが、RCの建築物は強度や法規的に問題が無ければ形状は自由だと言えます。強いて言えば変わった形はコストが増すのでオーナーさんの同意というハードルを越えなくてはなりません。それさえ越えればあとは型枠大工さんの腕でどうにでもどんな形でも作れるという訳です。

その時、忘れてははならないものの一つに水切り目地の適所取付けがあります。上の写真はとあるマンションの解放廊下の天井ですが雨の影響で塗膜や躯体に悪影響が出ています。液体には表面張力がありますので水平な天井では風の手助けなどもあって内部寄りに天井を伝わって来ます。その繰り返しで塗膜が剥がれたりしているのですが原因は水切り目地が無いという事です。

水切り目地とは呼んで字の如く水をそこで切る為の目地です。下の写真では水切り目地の働きによって水が内側に寄って来ていない事が確認できます。

DSC01855※写真をクリックすると動画が見れます

忘れてはならないものや省いてはいけないものってありますよね。個性豊かという名のもとに形や見た目だけに捕らわれた建物だけはご勘弁を。

 

うちどい

写真の因果関係がわかるでしょうか。

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アスファルトシングル葺きの屋根が経年劣化に伴い表面の砂材(彩色砂粒というらしい)が無くなっています。さて、その砂材はどこに?雨などの影響で下方流れて行きます。先には樋があります。一部は樋内に溜まります。自然に降り積もっている土などと混ざります。動かなくなります。植物が生えます。雨が更に滞ります。天井に雨漏りします。RCなのに。

これは、内樋であるがための結果です。先端に軒樋が有る場合は樋が詰まる事はあっても天井には雨漏りはしません。意匠的な配慮で屋根が内樋になっている建物は数多くありますが、シングル葺きは再考の余地があると言わざるを得ません。仮にシングル葺きでない場合でも内樋が原因となる雨漏り事例は沢山発生しています。その場合、形状変更をお勧めしたり、オーバーフローなどの対策をご提案させて頂いております。何度も言いますが‟形で流す”事が建物にとって最良であると私は考えております。10年後20年後、そして50年後100年後まで考えた設計が当たり前だった先人に学ぶ事は多いのではないでしょうか。

 

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