雨漏りリスクが大きい「出巾木」の功罪

室内に於いて、「巾木」は大切な役割を担っています。それは、施工上の目隠しでもあり、掃除などの作業の衝撃や汚れから壁を守っています。また、意匠的にも見切り材として、天井廻縁と同様に引き締まった雰囲気の空間演出にも一役買っています。

ですが、建物外部に於いてはどうでしょう。例えば、マンションなどの解放廊下や階段という場所での「巾木」の役割は、やはり、清掃作業に対する防護や靴などが接触した場合の汚れ防止ということなのでしょう。また、塔屋廻りや建物外周にも「巾木」は存在しています。そして、そのほとんどが「出巾木」と言われる形状となっており、多くはモルタルなどで成型されています。壁面から10mm~30mm程度出っ張って設けられている「出巾木」の天端は雨も滞りやすく、巾木内へ浸入する時間を雨水に与えることになります。

更なる問題は、その出巾木が存在している場所の階下が居室だった場合の雨漏りリスクです。階下が居室という場合、そこはルーフバルコニーや屋上ということになりますので、自ずと防水処理が施されているはずです。下地が、コンクリートであってもALC版であっても出巾木の仕上げ材であるモルタルとはいずれ浮き(剥離)が発生してくると考えられます。故に、その間に防水層が存在しているとなれば、より浮きが発生しやすくなっているであろうことは推測に難くありません。また、実際、そういった状況に多く遭遇します。

浮いた出巾木の天端付近から浸入した雨水は、出巾木裏面に充満し、更に浮いてしまった防水層の裏側に流れ込みます。その後の結果はご想像通りです。

いつも感じるのですが、建物外部の「出巾木」は本当に必要なのでしょうか?
台車などを取り扱う場所ならいざ知らず、絶対に必要だとは思えないのです。意匠的にはテープ別れという色だけを変える方法も可能です。お薦めは「入り巾木」です。文字通り壁面より凹んだ形になっています。この形は雨仕舞的にも優れていて、防水端末が絡むときも無理のない雨水の処理が可能になります。但し、その形にするためには施工に多少手間が掛かるのも事実であり、残念ながら実際にはあまり採用されない傾向と言えるでしょう。

雨水の流れを考えたとき、出巾木と入り巾木とでは、雨漏りに対する安心感がまるで違います。しかも、劣化が早いと考えられるシーリング材が機能しなくなった場合の雨漏りリスクにも大きな差が出てきます。雨仕舞的にはデメリットしかない「出巾木」作成の予算は、「入り巾木」にするための予算に振り替えてみてはいかがでしょうか。

立ハゼ葺き(立平葺き)も瓦棒葺きと同じく先端にリスク有り!

立平葺きの軒先雨浸入事例が多く報告されていますが、ハゼ葺きのような鉸め部分が狭い場合でもどうやら雨浸入リスクは免れないと言えそうだ。

ご承知のようにハゼ部という部位は板金部材の接続部分ですので慎重な雨仕舞処理が求められます。写真の状況はハゼ部分の先端であるため部材同士の隙間が発生しています。然るべき屋根勾配が確保されている場合、このような状況でも大きな弊害はないと考えられます。仮に雨が浸入したとしても、雨が止めばすぐに当該隙間から排出されるはずだからです。

しかし、こと緩勾配屋根の場合は状況が異なります。浸入した雨は唐草周辺に回り込み唐草固定用の釘などから更に浸水し下地の木材などに影響を与えます。いずれ釘周辺の木材は腐食し釘の固定力を奪います。夏場の熱射の影響などで板金が反り返ることで釘は木材から抜け出てきます。その繰り返しによって屋根板金の先端付近は固定力を失い屋根の反り返りを助長します。かくして、緩勾配の板金屋根には水溜りが発生し、隙間の開いた屋根の先端では雨の浸入リスクが高まります。

居住空間を優先した結果、「軒ゼロ」住宅や「緩勾配屋根」が考えられたと思われますが、その設計にはそれなりのリスクが伴うということを忘れてはいけません。建材はいつしか必ず劣化します。建材の性能だけに頼った建物は建材の経年劣化に伴いリスクが高まっていきます。

最近の建物の雨漏り原因の多くはこういった無理を押して設計された部位から多く発生していると感じています。今こそ、雨仕舞の基本に立ち返って建物を見つめ直すことが求められているのではないでしょうか。

 

水切りタイル?は ❝有り❞ か ❝無し❞ か

当時、RC造の新築の建物に於いて、サッシの水切り金物を使用せず外壁のタイルを加工して代用するという意匠設計が一部の設計士の間で流行ったようです。同年代の建物で同じような納まりをよく見かけます。今もこのような納め方をしているかどうかはよく分かりませんが、明らかなのは雨仕舞的な判断の中でこの納め方を“有り”か“無し”かを問うのであれば、答えは“無し”ということです。

理由は、タイルの目地は経年に伴い劣化し止水性能は弱まりますし、タイルの下地やサッシ廻りはモルタルだと考えられますが雨を食い止めるほどの水密性は無いと思われます。結果、浸透した雨水は躯体コンクリートに到達し室内側にも移動浸入してしまう危険が高まることになるからです。

こういった納め方が原因の雨漏りには数知れず遭遇してきました。ほとんどの場合、例外なく雨水の浸入口となっていました。目地セメントやモルタルは水を通さないのでは?と問われることがよくあります。しかし、単にモルタルと言ってもセメントと砂の比率が違うだけで止水性能には差があります。しかも、雨水は必ずしもモルタル内に浸透して移動している訳ではありません。どちらかと言えば、雨水は「モルタルとサッシの間」とか「モルタルとコンクリートの間」を主に移動するのであって、モルタル自体の雨水浸透率は大きな問題ではないと考えられます。

更に雨漏りを助長させる納め方としてタイルとサッシ間のシーリングの向きが挙げられます。タイルの上面の延長となる形でシーリングを施工すると雨水の影響を強く受けるため劣化も早くなります。シーリングは“防水材”ではありません。どんな場合も水の影響を受けにくい形で施工されることが望まれます。結果として耐用年数も延びますし、それによって雨漏りリスクも減ることは言うまでもありません。

 

雨漏りの思うつぼ

昨夜の激しい雨のせいだろうか、朝起きたら1階のリビングのフローリングの床に直径20センチメートルほどの水溜りができていて大いに驚いた。よく見るとサッシ上部の木枠(額縁)との隙間に水滴が残っている。何となく「原因は壁に吹き付けた雨だろう・・・」と思った。中古で購入した木造2階建ての我が家の外壁はいわゆる窯業系サイディングの横張りだった。

おそらくサッシの上にある目地が原因だと感じホームセンターでシーリングやら止水パテなどを購入し、気になる目地という目地に塗りたくっておいた。仕上がりの見た目はいまいちで妻や子供には不評だったが普段は目につかない場所だし問題はない。はずだった・・・。

それから1か月も過ぎた雨漏りの事など忘れかけていた頃、朝から降り続く雨でまたもや雨漏りが発生してしまった。しかも、今度は2箇所に増えている。これ以上根拠のはっきりしない自己流の補修を続けても解決しないと感じたので雨漏りの専門家を捜して来てもらうことにした。本当は、気になる部位がまだあるのでそこにもシーリング材を自分で打ってみようと思ったのだが、もしもそれで雨漏りが解決しない時は父親の権威に関わると思い自分で補修する事を踏みとどまったという方が正しいかもしれない。

業者は「雨漏り診断士」だと名乗りすぐに状況を確認し始めた。いろんな資格があるものだと感じつつ初めての雨漏りの行く先を案じていると確認を終えた彼は状況の説明を始めた。全てを理解することは出来なかったが彼が伝えたかったであろうことはおおよそ分かった。

建物というのは「雨仕舞」という技術を用いて造られていて、屋根や外壁の裏に浸入した雨をうまく排出できるようになっているらしい。雨の出口があちこちに組み入れられてるという事だった。そして、彼は「雨の出口を塞いではいけない」と言ったのだ。
ドキッとした。
その時、自分はやらかしてしまったのだと気づいた。だから、雨漏り箇所が増えたのだと理解した。

やはり餅は餅屋だな・・・と反省しつつ雨漏り調査の見積書を作成してもらうことになった。まずは原因を特定しない事には修理する場所や方法を決められないので調査が必要だという彼の説明が腑に落ちた。

ほどなく雨漏り診断士が帰ってから妻が雨漏りの原因は何だったのか?と聞いてきた。私は「調査しないと分かるはずがない」とだけ答え、自分が先日シーリングで塞いだ部分が雨の出口だったという事を話さなかったのは言うまでもない。

読んで字の如く 「水切り目地の働き」とは

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RC(鉄筋コンクリート)造のイメージは?と聞かれて何を思い浮かべるでしょう。「固い」、「丈夫そう」、「重厚感(重い)」、「建築費が嵩みそう」、などいろいろ感じると思います。しかし、そういった見た目のイメージの割には自由な形状のRCの建物が多く見受けられます。ドーム状の屋根や曲線を強調した外観など多種多様な設計が試され建築されて来ました。

昨今は木造建築に於いても奇抜な形や素材を駆使した建物が流行っていたりしますが、RC造と比較した場合、どちらかと言えば木造建築は日本古来の仕様を踏襲しています。その中の一つが雨仕舞だと思います。決して省いてはならない工程や納まりがそこにはあって、細部においても全体においても建物の形そのものが機能的に働いていると言えるでしょう。特に雨仕舞は建物を雨から護る知恵であり末永く住むためには必要不可欠なもので未来まで伝えていかなくてはなりません。

ところが、RCの建築物は強度や法規的に問題が無ければ形状は自由だと言えます。強いて言えば変わった形はコストが増すのでオーナーさんの同意というハードルを越えなくてはなりません。それさえ越えればあとは型枠大工さんの腕でどうにでもどんな形でも作れるという訳です。

その時、忘れてははならないものの一つに水切り目地の適所取付けがあります。上の写真はとあるマンションの解放廊下の天井ですが雨の影響で塗膜や躯体に悪影響が出ています。液体には表面張力がありますので水平な天井では風の手助けなどもあって内部寄りに天井を伝わって来ます。その繰り返しで塗膜が剥がれたりしているのですが原因は水切り目地が無いという事です。

水切り目地とは呼んで字の如く水をそこで切る為の目地です。下の写真では水切り目地の働きによって水が内側に寄って来ていない事が確認できます。

DSC01855※写真をクリックすると動画が見れます

忘れてはならないものや省いてはいけないものってありますよね。個性豊かという名のもとに形や見た目だけに捕らわれた建物だけはご勘弁を。

 

マイさん(雨仕舞) VS ふせぐ君(防水) 【エピソード1】

㋫: いわゆるマイさんは雨を直接止める事は出来ないって事だよね。ボクと違って。

㋮: どちらかと言えば形で受け流す的な仕事をさせてもらってるわ。こっちの方が賢い感じだわね。ふせぐ君と違って。それにふせぐ君は経年劣化するとボロが出て来るわよね。ウフフ・・

㋫: な、何言ってんの、そんな劣化なんてメンテナンスすれば何も問題ないんですけど!

㋮: メンテナンスすればね。じゃ、しなかったらだだ漏れってことかしら?

㋫: そ、そんな事言う自分は劣化しないっての?

㋮: いい質問だわ、ふせぐ君。さっきも言ったけど私は形で雨を処理しているのね。例えば、屋根の勾配だったり、軒の深さだったり、窓の庇だったり、雨を防ぐと同時に排出させる事を得意とするのね。それに見えないところでも頑張ってるわ。屋根や壁内の二次防水部分だったり、建具そのものの形だったりね。あなたが生まれるず~っと前から私は建物のお役にたっているのね。英知の結晶なのよ。わかるかしら?

㋫: ・・・まぁ、わかるような・・・、難しいような・・・。

㋮: 劣化は致し方ないけど、いわゆる防水層が劣化していくような事ではない訳ね。紫外線の影響も少ないし、どちらかと言えば挙動や風などでズレたり見えない所で風化したりって感じかな。ちょっと気付かれるのが遅くなる感じは否めないわね。

㋫: ところで、マイさんはどの建物にもいるんですか?

㋮: それがね・・・、いたいんだけどいない事もあるのよ。作る人が分かっていなかったり中途半端な知識で配置したりね。私がいないとたぶん困ると思うのよ住んでる人にしてみれば。でも、住人さんが私を呼ぶ訳ではないから難しいって話なのよこれが。後から改善するのは大変だから新築の時にしっかりやってほしいんだけどな。

DSCF7047  DSCF7048

【エピソード2】に続く、

たぶん・・・

そもそも打継ぎは雨漏りの原因に成り得るのか? ~後編~

打継雨漏り 【図3】

上図のような打継があります。左図は梁型を室内側に影響しないように外部に設計配置した外梁タイプの納まりです。右図はセットバック等の理由で外壁がスラブ上から立ち上がるパターンの場合です。この場合、内部に向かう浸透圧は雨量と経過時間によってはかなり高まりますので雨漏りに発展する場合があります。水平面で雨を受けてしまうという最悪の形状と言えます。雨仕舞には細心の注意が必要です。

さて、話は前回に戻ります。下図を再度ご確認下さい。

打継拡大

外壁垂直面が上下階に渡り連続する上図の場合の雨漏りの可能性を考えた時、【図3】と比較すると浸水の確率はかなり減ると考えられます。仮にシーリング材の防水性能が既に無くなっていたとしても室内側に浸出する例は少ないのです。もちろん無い訳ではありませんので誤解なきようにお願い致します。打継といってもいろんなパターンがありますので、打継からの雨漏りを疑う場合は事前に図面などで周辺の納まりを確認する事をお勧め致します。いずれにしても被疑箇所としての優先順位は高いとは言えないのではないでしょうか。まずは、開口部やスリーブなどから検討した方が順当だと考える次第。皆さんはどう思いますか?

基礎編に続く

原因は笠木内部に有り

1階のお店の玄関の天井付近から雨漏りしていました。外部にはシャッターBOXや後付けの庇があります。シャッターBOXは庇の下部にあるにも関わらず雨が流れたような跡もあります。

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雨漏り箇所の上階は解放廊下となっていて床は防水がしっかり施工されているようです。手すり壁を打診すると上部と下部では打診音に違いが・・・、どうも内部の下地構造は上下で違っている様子。更に笠木に目をやるとアルミ笠木がずれて隙間が出来ています。雨が内部に入っている事は確実ですが、だからと言ってそこから下階までどうやって雨が移動するのか?

アルミ笠木のズレ

 

分からない時は内部を確認するしかありません。アルミ笠木を取り外すと、雨が流れた形跡と同時に側面にある大き目のクラックが目に飛び込んできました。おそらく、内部の手すり天端(モルタル)上に雨水が滞留した後、側面を流れ落ちる時にクラック内に再浸入すると思われます。

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外部側に至っては外装のタイルまで一緒に割れています。既にタイルは剥がれておりタイルの厚み分が段差となり雨水が手すり内部に浸入する手助けとなっていました。

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以下、経路の考察です。

笠木から下階

手すりの構造が上下で違っているようで、内部に浸入した雨水が自由に移動できる環境にあると考えられます。空洞内の雨水はシャッターBOX側と室内側に分かれて落下しているようで、室内側に移動したものが雨漏りとして認識されていた訳です。内部のモルタル関係の補修とアルミ笠木の整備とシーリングを行いました。補修を急ぐ関係上、散水調査は行わず(濡れると補修が出来ないため)当日補修を優先した事例となりました。今後の状況観察が確認散水調査の代わりになる手はずです。よろしくお願い致します。

 

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乾式石貼り工法の雨仕舞

 

外装が石貼り(乾式工法)の建物でサッシ上からの雨漏りがありました。石とコンクリートの間には50mm以上の空洞がある為、石目地の劣化に伴う直接的な雨漏りは考えにくい状況です。石目地のシーリングの劣化に伴い雨水がその空洞内を落下します。マグサ部分で水溜りになったと思われる雨水はサッシ側にも移動します。石とサッシの高さの具合にもよりますが今回はサッシの上部を雨水がモルタルに浸透して移動したと思われます。

石貼り雨漏り

開口部が無ければ空洞に浸水した雨水は最下階まで流れるだけでしょう。今回はマグサ部分に雨が滞留した事が原因なのですがその雨水を自然に排出できる水抜きがあれば室内には雨漏りしなかったと考えられます。サッシと石の取合いにあるシーリング部分は雨水が自然に入り込む可能性は低いと思われますので、あえてシーリングを打たないという選択も考慮した方がよいかもしれません。また、上図のように石の段差部分は雨水が ‟引っかかる” ため雨仕舞的にはお勧め出来ません。入りにくい形、排出しやすい形、石貼りでも雨仕舞を怠る事なかれ。

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