電気配管系からの雨漏りの入口とは

1階の室内にある壁面のコンセントBOXから雨漏りが発生しています。
おそらく、電気配線が通っている配管(鋼製)内に雨が浸入している様子。
(黄線:推測経路)

2階の共用部に分電盤がありますが内壁側に扉があるので雨が吹き込むことはないようです。配管は躯体コンクリート内を通っていると考えられます。おそらく、2階の廊下の床コンクリート内だと推測しました。

まず、ブロアで風を送り分電盤と浸出箇所がつながっていることを確認。風はスムーズに通っているようです。そして、2階の廊下の床面を目視し雨が染み込むようなひび割れなどがないかを確認。特に気になる現象は見受けられませんでした。

そもそも、配管自体にジョイント部分が無ければ水分が配管内に浸入することはないと考えられます。配管は鋼製ではありますがコンクリート内に打ち込まれているのでコンクリートの強アルカリ成分によって簡単には錆びたりしません。よって、腐食による穴などがあるとは考えにくい状況です。また、通常、配管類を躯体に打ち込む場合、それが床面や壁面であれば、鉄筋と鉄筋の間に配置するので躯体面からはある程度距離があるはずです。簡単に水の影響を受けるとは考えにくいと言えるでしょう。

では、どうして配管内に雨は浸入したのでしょうか?

気になるのは建物に後付けされたテント庇です。コンクリートにアンカーで数か所固定されています。このアンカーをコンクリートに取り付けるにあたり下穴を開けたはずです。おそらく、その穴自体は配管の手前ギリギリで止まったのでしょう。しかし、アンカー部材を打ち込むときに配管に影響が出たのではないでしょうか。

もし、アンカーの深さがもう少し深ければ配線に接触しショートしたり漏電事象になったかもしれません。

その後、テント付近に散水し、アンカー付近からの浸水が確認されました。今回の事例では何故か電気配管が躯体の近くに配置されていたことでアンカー類の影響を受けてしまったようです。テントに限らず後付けのものを取り付けるときは最新の注意を払わねばなりません。

下図アンカー付近に打ち込み配管が通っていた可能性が高い。

 

釘は貫通している

DSCF5531小屋裏です。先日化粧スレート(コロニアル)を葺き替えたそうです。コロニアル固定用の釘がたくさん確認できますね。梁には以前の雨漏りの跡があります。雨漏りは今は改善しているそうです。写真の屋根下地であるベニヤ板の上には二次防水であるルーフィング材が敷かれているはずです。最近は自着層付のルーフィング(ゴムアスシート等)が主流になっています。そして、その上に化粧スレートを葺いていて釘で固定しています。その釘が写真のように小屋裏に突き出ています。これは一般的な施工方法ですが二次防水であるルーフィングを釘が貫通している事に問題はないのでしょうか?

化粧スレートや瓦などは一次防水を担っていますが雨を100%遮断する事は不可能です。強い雨や強風が伴った雨の場合はそれなりの雨量が二次防水層まで浸入しています。当然、固定している釘の周りにも雨は到達します。ルーフィングや下地ベニヤが新しいうちは釘の周りには隙間などは少なく雨も小屋裏まで到達する事は多くありません。しかし、時間が経つにつれルーフィングの柔軟性は失われていきますしベニヤ板の釘の廻りも水分の影響で徐々にふやけたりしますので止水効果は減退します。釘が錆びる事によって止水力が落ちる場合もあるでしょう。そして、写真の建物のように天井に雨が漏り出すことになるのです。

DSCF5530こんな感じです。

日本では、スレート系の屋根の場合はおおよそ同様の工法で屋根が葺かれています。瓦屋根の場合は瓦桟を固定する時にはやはり釘止めですが、瓦に関してはルーフィング上の排水方法は確立されていると言えるでしょう。瓦桟受という部材を使えば更に排水効果を高めるので雨がルーフィング上に留まる時間は短くなり雨漏りの確率を下げてくれます。不安なのはやはり化粧スレート葺きでしょうか。スレートとルーフィングが密着している部分がある為、雨水が澱みやすく雨漏りリスクが高くなっています。陸屋根以外の屋根で雨漏りがあった時、スレート葺き屋根が問題となっていた確立は8割を超えています(練馬店の場合)。

屋根工事を生業としている方々に問えば「それは、メーカーがそういう仕様で製品を作っている訳だし、建物には多少の雨は浸入しているものだから問題は無い」的な事を答えます。確かに、問題があったとしても彼らが改善出来る事ではないのでしょう。しかし、現場側から声を挙げなければメーカー側としても改善する考えは出にくいはずです。運搬、加工、施工費、全ての面で魅力的な化粧スレートは爆発的に普及し日本の建築を支えてきました。しかし、その陰で気づかない小屋裏の雨漏りは増えている可能性は高いのではないでしょうか。そこに建て主さんは不在です。新たな対策を共に見つける事が建築に携わる者としての使命ではないでしょうか。

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