雨漏りしない証明は「悪魔の証明」なのか?

起きないことや存在しないことを証明することは困難である。何故なら全ての可能性を検証し尽くすことは不可能に近いからである。

同様の理由により現在雨漏りがしていない建物に対し[本当に雨漏りはしていない]という証明を求めることも「悪魔の証明」と言えるのではないだろうか。

雨漏りが実際に発生している建物の散水調査に於いてシャワーヘッドのモードは「シャワー」モードであり決して「ジェット」モードにはしない。必要以上に強い水流を調査には用いない。そして、被疑箇所に対して真横方向から散水することは少ない。それは、雨漏りしていた時に近い状況を想定し散水調査を実施するのが大前提であり無理やりに雨漏りを再現しては原因を見誤ることにつながるためである。もちろん、台風時にしか雨漏りが発生しないということであればこの限りではない。

例えば、散水調査によって雨漏りしていない証明を行うことになった場合、どちらかと言えば自然現象の中でも建物にとって最も厳しいであろうという状況を想定しながら実施することになる。それは、陸屋根防水層の性能試験時に実際にプール状になる事は少ないにも関わらずそういった満水(水張り)試験を実施する事にも似ている。

よって、散水調査に於いても最低でも台風やゲリラ豪雨(突発性局地的大雨)の状況に近い水流(量・勢い)や降雨時間を設定する事になるのではないだろうか。とは言え、水流は調整できたとしても降雨時間や渦巻く強風までを再現することは困難と言わざるを得ない。そして、建物の全ての部位に散水する事は非現実的と言える。

近年、中古住宅の流通活性化に伴いホームインスペクター(住宅診断士)によるホームインスペクション(住宅診断)が行われる建物が増えてきている。その結果、雨漏りらしきものが発見された場合、ホームインスペクターは雨漏りに関しては目視のみで報告するので「疑わしきは報告しておこう」となる。結果、瑕疵担保責任の見地から雨漏りの改善が保険加入の条件になるという事例も発生しているようだ。雨漏りが疑われる場合、それを改善しないと住宅瑕疵担保責任保険に加入出来ない可能性があるというものである。

それが、「雨漏りに見えるだけで雨漏りはしていない」のだとしても今後は[本当に雨漏りはしていない]という証明が必要になってくるのではないだろうか。となれば、たとえそれが「悪魔の証明」だとしても執り行う必要が増えてくる事は明らかである。

では、誰がどのような検証を行えば「本当に雨漏りはしていない」という証明になり、更にその報告書を信用してもらえるのだろうか。ホームインスペクターの普及に伴い新たなルールも必要になったと感じるものである。

しかし、実は既に「本当に雨漏りはしていない」検証は実施され報告書を提出したことがある。詳細は言えないが当事者間に信頼関係がある限り結果に理解は得られるものだと確信している。

「本当に雨漏りはしていない」証明は今後も依頼があれば対応しようと思うし対応するべきだと感じている。せっかくの国の住宅政策である中古住宅の流通促進を後押しする意味でも誰かが結論を導き出さなくてはならないからである。

 

ついに「雨漏りしていない証明書」発行か!?

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先日、お客様から「この建物を購入するにあたり雨漏りしていない証明をしてほしい。」という相談を受けました。「どこか怪しい所があるのですか?」と私、「特にありませんが後で雨漏りされると困るので。」という趣旨の事をお客様はおっしゃいます。要は、今は何の問題もなさそうだけれど、中古だし危険な箇所があるのであれば今のうちに売主側に改善させたいという事でした。

はたして、「雨漏りしていない証明」とは可能なのでしょうか?今現在、雨漏りが確認されていない時点で、過去の自然環境下では問題がなかったという事自体が「雨漏りしない証明」なのではないでしょうか。それでも仮に証明するとした場合は建物の隅々を確認し、怪しい所を何らかの調査をして確認するという流れになると思いますが、雨漏りが具象化していない、例えば小屋裏のシミなど全ての部位を確認する事は不可能ですし、そもそも怪しい所の定義とは何なのでしょう。見立てる人によって対象ヵ所にも大きな差が生まれると思います。

仮にそういった作業の果てに「雨漏りしていない証明書」のようなものを発行できたとしても、その数年後、雨漏りが発生してしまった場合。結果として、その雨漏りが何故発生したのかを調査しないといけません(それは私達の通常業務です)。それでも、それが新築当初(売主)から存在した原因なのかどうかを証明し誰に責任があるかまでを解明できるとは思えません。ましてや「雨漏りしていない証明書」を発行した業者の責任を問えるものなのでしょうか。

だとすれば、事前に予算を使って「雨漏りしていない証明」をする事は無駄な作業という事になります。よって、その予算は通常の経年劣化対策(外壁塗装など)に充て、雨漏りなどの不具合が出にくいように心がける方が得策だと考えます。

建物の不具合に対しては瑕疵担保責任や品確法(住宅の品質確保の促進に関する法律)などでも対応出来るものもあるのではないでしょうか。そして、不幸にも雨漏りが発生してしまった時は遠慮なく私達にご連絡下さい。私達は必ずや原因を特定し責任を持って改善致します。もちろん「雨漏り修理保証書」は発行させて頂きます。

 

 

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