浮きタイルは雨漏りの原因となり得るか?

外壁の仕上げにタイルを貼っている建物は数限りなく存在しています。しかし、見た目は同じでもその下層であるタイル下地の仕様は建物によって大きく違っているかもしれません。
最近のRC造の建物は、躯体にタイルを直貼りしているかのごとくタイル下地のモルタルが薄くなる傾向のようです。一昔前に比べ、躯体表面の不陸を小さく施工出来ることや薄付けモルタルなどの材料が進化したこともその要因だと思われます。

上の写真ではタイル下地モルタルが5度塗りされており、下地の厚みだけで55mmもありました。これほどまで塗り付けるには何か訳があったのかもしれませんが、総面積に対するいわゆる“浮き”の比率はとても少ない状況でした。

多くの建物の浮き補修を手掛けて、私が個人的に感じるところでは、“浮き”は最近の新しい建物の方が格段に多いと思うのです。確固たる理由は不明ですが、やはりそれは施工時の手間の掛け方の違いだと感じています。大事な工程が抜けているかもしくは不完全なのではないでしょうか。

というのも、おそらくは材料なども昔よりは今の方が研究され開発されているのでしょうから、材料による付着等の問題は最近の方が有利なはずです。そうなると、不備が疑われる部分は下地のサンダー等による「目粗し」や、その後の「清掃」ということになります。

パネコート(塗装型枠ベニヤ板)や剥離剤の影響もあることは否めませんが、パネコートを使用した建物のほとんどで浮きが多いという訳ではないようですし、剥離剤についてもほとんどの物件で使用されていると考えられますが、やはり全部の建物で多くの浮きが発生してるという因果関係は確認できていないようです。

以上のことから“差”があるとすれば施工方法という事になるのではないでしょうか。

写真の①、②、④の層には付着を強める“櫛引き”の跡が確認できます。少しでも塗り重ねるモルタルとの付着力を高めるためです。下地は、作業に支障がない程度にザラザラな方がよいのです。では、最初に塗り付けるモルタルにとっての下地であるコンクリートは平坦でもよいのでしょうか?

否。なるべくザラザラな方が良いに決まっています。
そこです。
そこの処理が甘いのでは?
「目粗し」と「清掃」がです。

そう思わざるを得ません。(個人の見解です)

単にタイルの浮きと言っても、タイルのみの浮きの場合や、下地モルタルとコンクリート間の浮き、下地モルタルの塗り重ね間の浮きなどいろいろです。

よく、タイルの浮きと雨漏りを直結して説明してくる方をお見受けしますが、タイルのみの浮きだけで雨漏りの原因と決めつけるのには違和感を感じます。確かに最近の建物はタイルの下がすぐコンクリートかもしれません。でも、コンクリートにクラックやジャンカなどの不具合が無いのであればタイルがどんなに浮いていても雨漏りにはならないはずです。

浮きは雨漏り原因の目安としては見逃せませんが、原因そのものではありません。そこからどういう経路で浸水しているかを読み解くことこそが重要なのです。

雨はさっさと流す。溜めない。澱ませない。

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いい天気ですね。
こういう日は屋根に上ると気持ちがいいものです。
今日は防水の現状確認と採寸のためRCの建物の屋上に来ています。

一般的に防水工事の単価は市場原理によって大きな差は無いと言われています。しかし、建物の状況はそれぞれ違う為、防水作業前に行わなくてはならない下地処理作業もそれぞれ異なる訳です。

同じ防水工事を行うとして数社から見積もりを取った時に金額に差が出るのはこの下地処理部分の差だと考えられます。

しっかりとした下地処理を提案する会社ほど工事費は当然かさむ傾向があるのですが、オーナーさんがその部分に対してどのようなお考えをお持ちかによって業者の選定結果は異なります。

しっかりとした下地処理を行い建物をより永く使用できるようにと提案する業者ほど胡散臭がられる事になったりもしているかもしれません。逆に大した下地処理もしない為価格がお安く口が達者な業者さんほど世に蔓延ってしまうのかもしれません。

最初の改修工事ではなかなか業者の良し悪しも分かりにくいかもしれませんが説明が腑に落ちる業者さんを選ぶ事がこれからは大切なのではないでしょうか。

さて、写真の屋根には最初から防水層が存在しません。コンクリート素地のままなのです。築20年以上経過していますが雨漏りは有りません。少し爆裂が発生しているぐらいです。防水層が無いから膨れたり捲れたりもしません。発想がすごい素晴らしい工法だと私は思います。

流石に劣化が進んできているという事で防水工事の話しが出てきたわけですが劣化部分の補修を行えばしばらくこのままでも行けるのかもしれませんね。コンクリート強化剤などで復活させられればいいなと考えています。

よく見ると一般的なRCの陸屋根と比較して水勾配がしっかり確保されていてコンクリート面に雨が長らく澱む事は無いようです。いわゆる水切れが良い状態なのです。これはまさに雨仕舞の考え方です。雨はさっさと流す。溜めない。澱ませない。よって、水分の影響が少なく、結果下地も劣化しにくいという事なのです。

何でもかんでも防水に頼らなくても雨仕舞で解決出来る部分が建物にはまだまだ沢山あるのではないでしょうか。だって、昔は防水なんて無かったのですから。