Q:塗装で雨漏りは改善する?しない?➡A:一時納まることがある

「外壁塗装すれば雨漏りも止まります」的な話しで改修工事に踏み切った方もいらっしゃることでしょう。現に、雨漏りの原因によっては、確かに一時雨漏りが治まることもあるので「外壁塗装して良かった」と思うことになります。しかし、それは、もしかしたら外壁のクラック等が雨漏り原因だった場合などで、そのクラックが塗装によって一時塞がれただけに他なりません。その後の時間の経過に伴いクラックは振動や収縮等の影響で挙動し再度塗膜にはクラックが再発することでしょう。改修工事の時に(信じ難いですが)クラック自体の止水処理を実施してなかった場合はクラックの再発とほぼ同時期に雨漏りが再発し原因が分からず途方に暮れるかもしれません。おそらくは新たな原因が生じたと思いこんだりして・・・。

上の写真はRC造の建物のクラックが再発したと思われる状況ですが、クラック自体の隙間は小さくて雨漏りの原因とは考えにくい状況です。しかし、念のためクラック周辺の塗膜を削ぎ落としてみます。(下写真)

すると、塗膜の表面だけのクラックのイメージとは異なり、それなりに雨漏りの原因と言える程度の“真実のクラック”が露わになったのです。この程度のクラックからでも雨水は室内側に移動浸出します。二次防水層の無いRC造などでは雨漏りの原因として有力な原因の一つと言えるでしょう。

塗装だけで雨漏りを改善させようとすることは、本来の雨漏りの原因を見失わせるだけでなく、雨漏り改善の機会をも先延ばしにさせてしまいます。そして、後日、遅ればせながらその原因に気付けたとしても部分補修を行う事になれば、せっかくの全体改修で綺麗になった外観にも残念な結果を及ぼすことにもなりかねません。その真実を見抜ける方に依頼したいものです。

✕ 塗装 ➡ 雨漏り改善

◎ 雨漏り改善 ➡ 塗装

繰り返す雨漏り

同じ場所から繰り返し雨漏りが発生している場合の原因は以下の理由が考えられる。


①雨漏りの原因を改善できていない

②一つの原因は改善されているが他にも原因が残っている

③改善させた部分に再度不具合が発生している

①の場合は、雨漏り原因の見極めが間違っていた場合などで、そもそもの原因箇所の処置は行っておらず無関係の場所を補修していた場合などである。原因が改善されていないので補修前と状況は変わっておらず雨漏りが止まることはない。

②の場合は、いかにも見た目にも怪しい部位があったので簡易補修などで対応してみたが雨漏りは止まらなかった場合である。補修箇所自体は間違っていないので浸出量は減っているかもしれない。「複数浸入雨漏り」である。

③の場合は、浸入位置も確定し既にその部位の適正処理を行っていて、しばらくの間は雨漏りが改善されていたが経年と共に再発する場合である。挙動箇所にあるクラック部分が原因だったときなどにそういった傾向が見られる。補修後数年で再発した場合は当時の原因箇所も確認してみる必要がある。

原因位置の見極め間違いの場合はさておいて、複数浸入雨漏り「経年性再発雨漏り」にはたまに遭遇する。どちらも対応には苦労することが多い。特に、二次防水層が存在しない鉄骨ALC系の建物や鉄筋コンクリート造の建物はおおよそ同じ部位にクラックが再発するので厄介と言える。二次防水層が無いということは、外壁の不具合はいきなり致命的な雨漏りの原因になり得るということであるから。

建物に発生するクラックにはいろんな原因がありますが、大別すると収縮系クラック(乾燥、自己ひずみ)と挙動系クラック(構造ひび割れ)に分かれる。

鉄筋コンクリート造における収縮系クラックが初期段階で多く発生するのに比べ、挙動系クラックは地震や強風など外力の影響を受けて発生している。よって、建物が存在する限り挙動系のクラックも発生し続けると言えるのだ。そして、それは同じような位置で発生している。

それぞれの建物には、それぞれの建物の特性があり、外力の影響によって発生するクラックの位置はほぼ決まっていると思われる。なので、クラックを補修してもいずれまた補修材が破断して雨漏りが再発することは何ら不思議ではない。むしろ自然なことなのかもしれない。

私たちは、それぞれの事象に合った補修方法を真剣に考え検討し、長所も短所も理解した上でご提案するように心掛けなければならない。

 

 

複数浸入雨漏りの極み

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かれこれ三年ほど前だったでしょうか。最初の雨漏りの連絡があって状況を確認しに伺った時は外壁の塗装を行って間もないピカピカの状態だった事を覚えています。散水調査のご提案をして間もなく調査を行わせて頂き原因箇所を突き止めました。改善には屋根の板金作業も必要で外部足場を設置した上で改善作業を執り行わせて頂きました。①の部分でした。しかし、この時、この建物の雨漏り対応がつい先日まで続く事になるとは夢にも思わなかったのです。

再発の連絡があったのは最初の改善作業から数か月経った頃でした。確認も含め①の部分を再度検証しましたが問題はありません。その後、周辺の調査を行った結果②の部分に雨の入り口を発見。再度、雨漏り改善作業を行わせて頂きました。入口は違っていたのですが出口が同じになってしまう為、どうしても【再発】と受け止められる事は致し方ないと思います。確かに、一度の調査で見つけられなかった事も事実であります。

その後、数か月毎に再発のご連絡を頂く事数回。その度に新しい入口を見つけ出すのですが、何故か出口は同じという事でこちらの原因説明が言い訳っぽくなって聞こえてはいないだろうかと感じとても気まずい思いをしたものでした。それでも、毎回、私たちの説明に真剣に耳を傾けて頂き、理解をして頂いた事には大変感激致しております。そして、いつも美味しい飲み物とお茶菓子をありがとうございました。心より感謝申し上げます。

時は流れ、今年も台風シーズンに再発したという事でまたまた伺わせて頂く事になったのですが、今回は今までと少し状況が変化していました。最初に訪れた時には無かった(隠れていた)外壁のクラックがあちらこちらに散見されたのです。そして、今回の原因はそのクラックでありました(ラスモルタル仕上げなのでモルタルの亀裂と一緒に防水紙も破断していると考えられる)。

思えば、三年前の最初のヒアリングの時に奥様は言っておられました。クラックが目立ってきたので全体の塗装をしたばっかりなのに雨漏りしたんですよ。と。

そのクラックが今になって徐々に目立って来たようです。そして、そこにも雨漏りの原因が潜んでいたのです。この数年間は何とか塗膜で持ち堪えていたのでしょう。もしかしたら、それらのクラックが原因でまだしばらくはお付き合いする事になるのかもしれません。今度は違う場所からの浸出を望んでいる?事は言うまでもありません。