見極める技術

雨漏りには、シミが徐々に大きくなっていくようなものもあればいきなり始まるものもあります。昨日までは何でも無かったのに今朝起きたら床に大きな水溜りがあって驚いたという事例も少なくありません。

では、漏れ出た雨量に比例して雨の入口も大きいのかと言えばそうとは限りません。パックリ空いた穴が壁面に存在するにも関わらず雨の浸入量はさほどでもないという事もあります。それは、見た目の問題とは表層だけの事であり内部、例えば二次防水層はしっかりしているからなどということであります。

よって、調査を行う時に見た目だけの判断で結果を急いてはいけません。重大な見落としをする恐れがあります。たとえ入口が直径1mm程度のシーリングの穴であってもそこを流れる雨量によっては相当量が浸入します。内部に空洞が存在していてそこを雨が流れていることもあります。

例えば、明らかに怪しい大きい壁の亀裂と1mmの穴が近接して存在していたらどうでしょう。おそらくは散水調査でも同時に水が掛かってしまうような位置関係だとしたらあなたは1mmの穴の方を原因だと思うでしょうか。そもそもその小さな穴に気づいているでしょうか。

雨漏り診断士は闇雲に水を掛けまくっている訳ではありません。まず、被疑箇所を推測し散水する順序を考慮し根拠をもって実施しています。なので、最初の被疑箇所の推測の時にその1mmの穴に気付く必要があります。そうすれば、穴を塞ぎながらの散水も行えるはずです。それによってどっちが原因なのかはっきりするでしょうし、双方共に原因だったという結果だったとしても納得できるはずです。いずれにしても原因の特定には先入観の無い最初の見極めが重要なのです。

 

 

 

実は、究極雨漏り診断士には透視能力が備わっている!?

透視能力には2種類あります。

一つは水の流れを透視出来る能力。
もう一つは水が無くても水路(みずみち)を透視できる能力です。

どちらの透視能力も後天性のものですが簡単には身につきません。

もちろん本当に見えているわけではありません。X線も出せません。

例えば、パソコンなどを使用するときにタッチタイピングが出来る人はたくさんいますよね。あの、キーボードを見ないで指先の感覚だけを頼りに文字入力などをするあれです。向き不向きもありますが経験が増えるに従い努力も惜しまなければそのような技術も身に着くということは理解できるでしょう。徐々に感覚が研ぎ澄まされていくからです。

雨漏り診断においても同じことが言えます。
雨漏りを改善させるための修繕作業に携わっていると自ずと壁や屋根を剥がしたり撤去したりするので内部構造も確認できます。また、実績が増えればそれに伴い多様な構造を持つ建物の内部構造までも新たな知識として蓄積されていきます。

そんな蓄積データを駆使することで外壁や屋根を剥がすことなく建物の外部や室内から眺めただけで内部状況をある程度は把握できるようになります。もちろん例外がある事も事実です。

雨漏り診断士の多くは水が流れる空間を頭の中で描きながら調査を行っています。ですから、被疑箇所を推測するときは浸出部分から逆追いして考えたりします。内部の空間の水路(みずみち)をつなげる思考をしなくてはなりません。そして、ある瞬間、その空間を流れる水が一連のものとして、まさしく“つながる”のです。入り口から出口までの経路が閃く瞬間です。

更に経験を積んだ雨漏り診断士は散水調査を行わなくても、目視だけで被疑箇所をある程度高確率で言い当てられるといいます。結論付けるために散水調査を実施するようですが、その結果は目視で見立てた位置とほぼ合致するのだとか。その確率は日頃の研鑽により高められるといいます。やはり感覚が研ぎ澄まされていくのでしょう。

何の予備知識もない人から見ると、さも透視でもしているように見えることでしょう。
雨漏り診断士に雨漏り調査を依頼する時には、透視力レベル「+5」(※注1)の診断士に依頼して下さい。調査時間の短縮と信頼できる結果をあなたにもたらしてくれることでしょう。

※注1
ここだけフィクションです。

 

雨漏りの思うつぼ

昨夜の激しい雨のせいだろうか、朝起きたら1階のリビングのフローリングの床に直径20センチメートルほどの水溜りができていて大いに驚いた。よく見るとサッシ上部の木枠(額縁)との隙間に水滴が残っている。何となく「原因は壁に吹き付けた雨だろう・・・」と思った。中古で購入した木造2階建ての我が家の外壁はいわゆる窯業系サイディングの横張りだった。

おそらくサッシの上にある目地が原因だと感じホームセンターでシーリングやら止水パテなどを購入し、気になる目地という目地に塗りたくっておいた。仕上がりの見た目はいまいちで妻や子供には不評だったが普段は目につかない場所だし問題はない。はずだった・・・。

それから1か月も過ぎた雨漏りの事など忘れかけていた頃、朝から降り続く雨でまたもや雨漏りが発生してしまった。しかも、今度は2箇所に増えている。これ以上根拠のはっきりしない自己流の補修を続けても解決しないと感じたので雨漏りの専門家を捜して来てもらうことにした。本当は、気になる部位がまだあるのでそこにもシーリング材を自分で打ってみようと思ったのだが、もしもそれで雨漏りが解決しない時は父親の権威に関わると思い自分で補修する事を踏みとどまったという方が正しいかもしれない。

業者は「雨漏り診断士」だと名乗りすぐに状況を確認し始めた。いろんな資格があるものだと感じつつ初めての雨漏りの行く先を案じていると確認を終えた彼は状況の説明を始めた。全てを理解することは出来なかったが彼が伝えたかったであろうことはおおよそ分かった。

建物というのは「雨仕舞」という技術を用いて造られていて、屋根や外壁の裏に浸入した雨をうまく排出できるようになっているらしい。雨の出口があちこちに組み入れられてるという事だった。そして、彼は「雨の出口を塞いではいけない」と言ったのだ。
ドキッとした。
その時、自分はやらかしてしまったのだと気づいた。だから、雨漏り箇所が増えたのだと理解した。

やはり餅は餅屋だな・・・と反省しつつ雨漏り調査の見積書を作成してもらうことになった。まずは原因を特定しない事には修理する場所や方法を決められないので調査が必要だという彼の説明が腑に落ちた。

ほどなく雨漏り診断士が帰ってから妻が雨漏りの原因は何だったのか?と聞いてきた。私は「調査しないと分かるはずがない」とだけ答え、自分が先日シーリングで塞いだ部分が雨の出口だったという事を話さなかったのは言うまでもない。

防水専門 VS 雨漏り専門

小屋裏がこんなにひどい目に遭っています。この上は屋根(陸屋根)です。信じられないかもしれませんが、屋根の防水改修は数年前にFRP防水にて実施されています。

この小屋裏天井面クラックのエポキシ樹脂っぽい処理は防水改修工事以前のものなのか、それとも防水改修工事後のものなのかはオーナー様も分からないらしいです。はっきりしているのは、今も雨漏りは止まっていないという事。

不自然だと思いませんか?屋根の防水工事を行っているのにどうして室内側から止水処理を行わなければならなかったのでしょうか。雨漏りを改善させるためには雨の入り口側で修繕することが基本だというのに。(※地下室の場合は内側からも止水処理しますが)

防水工事施工前にこの止水処理行ったと仮定した場合、先ずは屋根の防水をしなさいって話じゃないですか。最初に内部(雨の出口側)から止水を試みるという意味がよく分かりません。結果、雨漏りが改善しなかったので全体の防水を実施することになったのでしょうか。

もしくは、FRP防水を実施したにも関わらず雨漏りが止まらないのでこのような所業に打って出たのでしょうか。それって、防水の品質の問題?それとも防水範囲以外に原因が存在していた?未だに原因は不明であり、オーナー様は憂鬱な日々を過ごされています。

【防水施工技能士】の資格は厚生労働省が主催する国家資格であり防水工事に携わる人々には必須資格とも言えます。対外的に技術の確かさを判断する基準にもなると思います。でも、技術が高くてもこと雨漏りとなるとその技術を活かせない事もあるようです。「雨漏りの原因を改善する事」と「信頼に値する防水工事を行う事」とはそもそも目的が違っています。どんなに素晴らしい防水工事を行っても、雨漏りの原因から外れていては何も改善しません。

防水施工技能士が防水の専門家だとすれば【雨漏り診断士】は雨漏りの専門家です。
雨漏り診断士は各種防水の特性はもとより建物の構造や納まり、外装材や二次防水など、見えない部位まで含めて総合的に雨漏りの原因を読み解きます。防水施工技能士の目的が「高品質の防水工事」だとすれば、雨漏り診断士の目的は「雨漏りの原因を突き止め雨漏りを改善する事」です。そのためには、その原因を突き止めるためには、雨漏りの原因調査が必要不可欠です。冒頭の写真の案件も、雨漏りの原因調査を行っていればこんなにも迷走することは無かったのではないでしょうか。

雨漏り診断士が雨漏りの原因を突き止め、防水施工技能士がそこの防水工事を行う。それはいいことだと思います。そうは思いますが、雨漏りの改善には防水工事だけでは改善しないことも多いのです。原因の数だけ修繕方法があると言っても過言ではありません。雨漏り診断士は雨漏りの原因調査だけを受け持つと思われている方もいると思いますが、原因調査に留まらず最適な修繕方法まで検討してこそ頼れる雨漏り診断士と言えるのではないでしょうか。

 

 

 

 

屋根を葺き替える前に出来る事があります

原因不明のままでドクターは治療や手術を始めませんよね。

先日、雨漏りもそれと同じだという話を雨漏りの権威の方から伺いました。
病気の原因が分からないままでは治療の方法が決まらないということです。

建物に於いても、明らかな外傷を伴なわない限り、思い込みで補修工事を行ったとしても雨漏りが解決する確率は低いと言えるでしょう。例えば、病院でお医者さんが「原因はたぶん○○だから、取りあえず△△の薬を飲んで下さい」って、不安じゃないですか?そして、おそらく何度も通った挙句、病気が改善する事はなく別の病院を探すことになるのです。

雨漏りの原因は建物によって千差万別ですのでそれぞれの原因にあった対処をしなくてはなりません。間違った処方箋を元に治療を行えば余計に悪化を招くことだってあります。天井の雨漏りが必ずしも屋根に原因があるとは限りませんし、壁の雨漏りの原因が外壁にあるとも言い切れません。また、原因は一ヵ所とは決まっていないのです。

たいして建物の状況を確認する事もなく、いきなり「屋根の葺き替えが必要です」とか「このまままでは建物がダメになります」とか「防水が限界だからやり直しましょう」とか言い出す輩を信用してはいけません。大抵の場合雨漏りは改善しません。たとえ改善出来たとしてもそれは偶然ですし、そもそもそこまで予算を掛ける状況ではなかった可能性が高いと思います。雨漏り調査を実施し、ピンポイントで原因を突き止めることは修繕費用の軽減にもつながるという事を忘れないでほしいのです。

状況の確かな見極めと正しい処方の両方が雨漏りの改善には必要不可欠です。
病気の事は医師(できれば名医と言われる医師)に、雨漏りの事は「雨漏り診断士」に相談して下さい。それが、貴方にとって最善の結果をもたらしてくれるはずです。

 

 

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