雨漏り改善の近道

雨漏りをなるべく早く改善したいのであれば上のフローの「Yes」を参考にしてみてください。ベストではないかもしれませんが、確実に解決に向かって行ける方法です。
一見、長いように見えますが、結果は急がば回れなのです。

専門家を「信じて任せる」事もストレスの軽減になるのでは?

雨漏りの改善を望む人は多いと思いますが、そんなに急いで直そうとは思っていない方もいます。そのうち、いよいよまずい状態になってから考えよう…とか。

いろんな考え方があるのでそういった考えを否定しようとは思いません。しかし、もし、建物からの意見というものがあるとしたら、やはりなるべく早く改善してほしいと願っているはずです。木造の建物でしたら腐食したり、カビが繁殖したり、害虫が寄って来ますし、鉄骨系の建物だったら錆が蔓延するかもしれません。それらは建物の寿命に悪影響を与えるものですから。

では、雨漏りの改善はあなたに何をもたらしますか?

ストレスの無い雨漏り発生以前の生活でしょうか。
途中になっていた室内の改装計画を前に進められることでしょうか。
天井を見上げるときの憂鬱な時間が無くなることでしょうか。

全て当たり前のことなのに嬉しいと感じるはずです。

これからは雨漏りに費やした時間を取り戻すために楽しい旅行の話でもしましょう。
もう憂鬱な気分で天井を見上げることはありません。そこには真新しいクロスが貼られていることでしょう。心機一転、部屋中の床も壁も天井も新しいものにしてもいいかもしれません。そう、この家に引っ越してきた時のように。

有限な時間を有意義に使うために近道は必須では?

お宅の床下は大丈夫?

最近、和室の畳に箪笥が沈み込んだりしていませんか?

散水調査によって雨が打継面から床下内の空間に浸入してくることが判明しました。一度浸入した雨の水溜りは雨が止んでもなかなか排出はされないようで床下はしばらくの間高湿度空間になっていると考えられます。

この建物の畳の下地はベニヤ板とパーティクルボードが使用されているのですが床下側にあるパーティクルボードはどちらかにといえば吸湿しやすく湿気に弱い建材と言えます。ということは、ふにゃふにゃになりやすいということです。その状態で畳の上に重量物が乗っていたらどうなるでしょう?

そうですね、今回もそうですが、箪笥が傾いてきたことで床下に目が向いたということです。雨の度に床下に浸水し、徐々に下地や畳がふやけていったのだと推測できます。

では、どういう経路で床下に雨が浸入するのでしょうか。基礎周りには止水処理はされていなかったのでしょうか。

・左の写真は散水調査中の基礎外部の状況

 

 

 

問題は耐圧版コンクリートの高さと打継面の止水処理にあると考えられます。


そもそも打継面に然るべき止水的な考えが働いていればこのような状況には陥りませんでした。止水版を施すなり、外側に防水処理を行うべきだったと思います。耐圧版コンクリートについても、あと5cm高く設定出来れば(出来たと思うが)今よりは浸水しにくかったと思います。周辺の土が飽和状態になれば、水位は耐圧版より高いところまで容易に到達することでしょう。であるならば、打継面から雨が床下側に浸入するのはいわば自然の流れと言えるでしょう。

さて、お宅は大丈夫ですか?
最近、畳が湿気っているように感じることはありませんか?

繰り返す雨漏り

同じ場所から繰り返し雨漏りが発生している場合の原因は以下の理由が考えられる。


①雨漏りの原因を改善できていない

②一つの原因は改善されているが他にも原因が残っている

③改善させた部分に再度不具合が発生している

①の場合は、雨漏り原因の見極めが間違っていた場合などで、そもそもの原因箇所の処置は行っておらず無関係の場所を補修していた場合などである。原因が改善されていないので補修前と状況は変わっておらず雨漏りが止まることはない。

②の場合は、いかにも見た目にも怪しい部位があったので簡易補修などで対応してみたが雨漏りは止まらなかった場合である。補修箇所自体は間違っていないので浸出量は減っているかもしれない。「複数浸入雨漏り」である。

③の場合は、浸入位置も確定し既にその部位の適正処理を行っていて、しばらくの間は雨漏りが改善されていたが経年と共に再発する場合である。挙動箇所にあるクラック部分が原因だったときなどにそういった傾向が見られる。補修後数年で再発した場合は当時の原因箇所も確認してみる必要がある。

原因位置の見極め間違いの場合はさておいて、複数浸入雨漏り「経年性再発雨漏り」にはたまに遭遇する。どちらも対応には苦労することが多い。特に、二次防水層が存在しない鉄骨ALC系の建物や鉄筋コンクリート造の建物はおおよそ同じ部位にクラックが再発するので厄介と言える。二次防水層が無いということは、外壁の不具合はいきなり致命的な雨漏りの原因になり得るということであるから。

建物に発生するクラックにはいろんな原因がありますが、大別すると収縮系クラック(乾燥、自己ひずみ)と挙動系クラック(構造ひび割れ)に分かれる。

鉄筋コンクリート造における収縮系クラックが初期段階で多く発生するのに比べ、挙動系クラックは地震や強風など外力の影響を受けて発生している。よって、建物が存在する限り挙動系のクラックも発生し続けると言えるのだ。そして、それは同じような位置で発生している。

それぞれの建物には、それぞれの建物の特性があり、外力の影響によって発生するクラックの位置はほぼ決まっていると思われる。なので、クラックを補修してもいずれまた補修材が破断して雨漏りが再発することは何ら不思議ではない。むしろ自然なことなのかもしれない。

私たちは、それぞれの事象に合った補修方法を真剣に考え検討し、長所も短所も理解した上でご提案するように心掛けなければならない。

 

 

モルタル出巾木は「無用の長物」なのか?

室内に於ける巾木の役目としては、見た目の印象もしかりですが、納め方が技術的に難しい床と壁の取り合いの不具合を隠す意味もあると聞きます。しかし、一番の役割は掃除機などが当たった時の衝撃などから壁を守ったり傷が付かないように設置されているのだと考えられます。

 

では、バルコニーなどの外部で見受けられるモルタル出巾木の役割はなんでしょう。

掃除機はあまり関係なさそうです。
モップやデッキブラシは接触するかもしれません。
でも、「出巾木」でなくてもよさそうです。

防水端末の納まりがいいからでしょうか。やはり見た目の印象を考えての事でしょうか。それとも、何かを守っているのでしょうか。

しかし、出巾木は雨漏り的にはあまりありがたくありません。
写真のように塗膜防水を施していてもモルタル巾木の浮きに伴い壁の取り合いにクラックを生じさせます。また、その浮きはモルタル巾木自体にもクラックを発生させます。どちらも防水層の裏側に雨水が入り込む原因になってしまいます。

よって、防水改修を行う時はまず浮き補修から行う必要があり余計な予算が発生します。下地がALCの場合は再付着もしにくく、結果、モルタル巾木自体を撤去する場合が多いです。その作業をするにもまた予算が発生します。仮に上手に補修出来たとしても浮きはいずれまた発生します。

となれば、どう考えても出巾木たるものは“無用の長物”なのではないでしょうか。

かと言って、テープ分かれ仕上げでは意匠的な貧弱感は否めません。

お勧めは、室内、屋外を問わず「入巾木(いりはばき)」でしょう。壁面より巾木の方が引っ込んでいるように納める巾木です。一般的にスッキリ感と高級感を感じられる納まりと言えます。しかし、出巾木と比較して取り付けや加工に手間暇が掛かるので実際にはあまり採用されていないように感じます。

外部の場合で入巾木にしにくい場合(ALC)では、防水立上り端末を溝斫りの上、水切り金物を取り付ける方法もあります。

要するに、壁面から外方向に出っ張るような納め方には雨漏りリスクが高まる傾向があるので避けた方が無難ということです。

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塗膜は切れたが役に立つ

数年前、ALC下地45二丁掛けタイル貼り仕上げの外壁に防水系クリアー塗装による雨漏り改善作業を行いました。いろんな条件を鑑みこの材料での対策を選定した事を覚えています。しかし、昨年の暮れに同じ場所から雨漏りがあったとの事で再度調査を実施。結果は以前とは異なる位置からの浸入であったのだがなかなかその原因にたどり着くことが困難でした。

まずは、以前防水系クリアー塗装を限定施工した部位を目視。塗膜はしっかりしているし塗膜の浮きや剥がれは一切確認できない良好な状態。であれば原因は未塗装の部位ではないだろうか?という仮説を立てサッシ廻りや各所貫通金物廻り、シーリング付近など順次散水調査を実施していった。しかし、一向に再現される兆しは見えてこなかった。

そこで、最初に立ち戻って防水系クリアー塗装を施した範囲を再度確認。 ん? 何やらタイル目地に沿って縦方向に線のような亀裂が・・・。塗装部位は問題ないという先入観があったのかもしれません。さっきは塗膜の亀裂に気が付かなかったのです。透明なので余計に分かりにくい事も作用したのかも。そして、そこに散水すること30分。先日、雨漏りした位置に再現させることができた次第です。その部位は以前とは異なる原因箇所でした。以前に施工してからの数年間に発生した事になります。

もしも、そこにクリアー塗装が塗布されていなかったら・・・。隙間が小さすぎて発見にはもう少し時間が掛かったかもしれません。タイルと目地は見ようによっては微妙な隙間が出来ている事が多いので気になるところはいちいち検証する必要があったりします。しかし、クリアー塗装が塗布されていたおかげで挙動を伴う隙間だけを特定させる事ができたのだと思います。(最初は見落としましたが・・・)

下地が動けばそれを塗膜で食い止める事は不可能です。ましてや今回は鉄骨ALC造ですから致し方無いところもあるのです。塗膜の性能や施工の巧拙を責めたり、破断した不幸を呪うのではなく、発見に貢献した塗膜の功績を称えるべきではないでしょうか。塗っておいてよかったという事で。そして、補修はそこだけ行えばいいのですから。

 

 

 

 

「今まで、当日に出て来る事はありませんでした」~後編~

【続きの検証】昨日の満水調査では結果が出なかったので、別の方向からの浸水経路を検討してみました。

昨日は浸水個所からほど近い木巾木の方向に原因があるのではないかという仮説を基に調査を行ったが本日は上がり框方向を被疑個所として調査を行う事にしました。

上がり框方向には廊下があってその向こうにトイレがありその先が外部になっています。もし、トイレ側の外壁方向から雨が浸入しているとなれば玄関の水溜まりまで4m以上の距離があるという事になります。そうなるとその途中の部位からの浸水の可能性まで探る必要も生じてきますので、より確実な浸水箇所の確認のためトイレ内に床下点検口を取り付けさせて頂く事をオーナー様に相談し了承を頂きました。床下点検口を取り付ける事で新たな状況を目視出来るのでより信憑性の高い仮説を立てる事も可能になります。

思った通り床下世界には〝水”が存在した形跡があちこちに見受けられました。際根太のシミ、土間コン面から吸い上げたような木材の変色、床下のパーティクルボード面の濡れ跡などが散見され、この空間に水分が浸入していた事は疑いようがありません。よって、雨漏りはこの空間付近、または、この空間を経由しているであろう事が判明したと言えます。

以上の条件を踏まえ、再度散水調査を行いました。

床下点検口から目視した結果も加味した上で、被疑個所を数か所設定し順次散水を行いました。そして、トイレに面する外巾木上部に散水後しばらくして建物内に浸入する水が確認出来ました。

その後、土間コン上に水溜りが発生し、その一部が玄関側に流れて行く事を確認、水位が上昇する事で玄関の床タイル面から浸出するという経路が判明しました。以下、まとめの概略図です。

玄関の床タイルからの浸出箇所はいつも同じ場所のようです。そこに毛細管現象が発生しやすい原因があるのだと思います。ある程度の雨量が床下に浸水したとき、ある程度長い時間を掛け玄関側に雨水が到達し、更にタイル下地のモルタルが湿潤状態になった後、毛細管現象で特定の場所ににじみ出てくるという経路でした。

ある程度の雨量が長く続いた時にだけ発生する。しかも床面から。なかなか手ごわい事例でしたが床下点検口を取り付けられた事が結果につながりました。

挙動する目地の上にタイルを貼ってませんか?

鉄骨ALCの場合でも鉄筋コンクリート造の場合でも目地(シーリング)をまたいでタイルを貼る事によって起きる弊害があります。写真の場合は構造目地とタイルの化粧(伸縮)目地にズレが生じている状況のままタイルを貼り込んでいたせいで構造目地上のタイルに浮きが生じていました。

タイルは落下こそしていませんでしたがタイルの裏面には雨が流れる程度の空間があったため下方では雨漏りが発生していました。浮きの原因はおそらく目地の収縮によるものだと考えられます。また、シーリング材とセメント系のタイル接着剤との相性にも問題があったと考えます。

おそらく、構造目地と化粧目地がしっかり重なり合っていれば浮きの発生確立は減ったのではないでしょうか。いずれに致しましてもこのまま元の位置にタイルを復旧する事には危険が伴いますので仕上げ方法の検討が必要だと思います。

タイル貼りの建物は仕上げタイルの大きさによって目地の位置がおおよそ決まってしまいます。タイルのピッチ(間隔)を計算しながら構造目地などの位置を決める事が肝要ですが構造上の決まり事もあるので自由に目地位置を決める訳にもいかないとは思います。

意匠と構造のせめぎ合いをうまくまとめる事が将来の雨漏りを防ぐ事にもつながりますので時には見た目より実利を優先する事も致し方ないのではないでしょうか。関係各位の理解が得られる事を願って止みません。

「今まで、当日に出て来る事はありませんでした」~前編~

必ずと言っていいぐらい翌日に雨漏りらしき水が床に溜まるそうです。それも床の真ん中に・・・。本当に雨漏りなのでしょうか?

【建物構造】鉄骨ALC(㋐100)造 2階建 住居専用(住人3名)

【雨漏り部位】1階玄関の床タイル面

【雨漏り状況】大雨や長雨の翌日に気付くと玄関床タイル面に水溜りがある(まるで立てかけた傘の下に出来る水溜りのように)。周辺の壁や巾木に雨漏りの形跡は見受けられない。水溜りは直径10cm~20cmぐらいが多く、それ以上大きくはならない。

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【原因の仮説を立てる】

①写真左上側の木巾木の向こうは外壁である。ALC造の原因にありがちな、基礎コンクリートとALCパネル間の継ぎ目付近のシーリングの劣化に伴い建物内に浸水した雨がタイル下地内を移動して滲んで来るのではないか。もしくは、ALC自体にクラックが発生し同様の現象が起こっているのではないか。(写真右上は上がり框)

②建物周辺は砂利敷きでありその下層は土で埋め戻されている。地中内に何らか(打継等)の原因が存在し、そこが浸入口となっているのではないか。大雨で周辺の水位も高くなり浸透圧が上がった時だけジンワリと浸入してくるのではないか。

③家主の掌握していない範囲で居住者の誰かが帰宅後傘を立てかけているのではないか。

【仮説の検討】家主様のお話しでは、まず③は無いとの事(念のため聞いただけです・・・)。①の場合、滲出までの時間はもっと短いと思われる。また、壁面側の床付近にも雨漏りの形跡があって然るべきではないだろうか。よって、この段階で有力な説は②だと考えた。

【検証】②の仮説に基づき雨漏り箇所付近の外部砂利面に散水(満水)を行った。大雨の状況を再現するべく可能な範囲で砂利面の水を左右端部でせき止め、なるべく水位が高く(少なくとも玄関の床面より上に)なるように行った。普段の浸出現象が翌日との事でしたので、散水(満水)調査は朝から行い可能な限り夕刻まで水をつぎ足しながら行った。

散水開始後は調査水が地中に浸透していく為水位は上昇しないが、時間の経過と共に地中が飽和状態になるにつれ水位は砂利上数センチで安定した。自然に減少する量を常時加水する形で調査を継続した。

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【結果】時間内に雨漏りは確認されなかった。しかし、この後ジンワリと滲出する可能性があるため家主様に確認をお願いして1日目は終了となった。

翌日、確認したところ雨漏りは確認されていないとの事で仮説の段階に戻って再検討する事になった。

~後編~へ続く

下笠木が軒樋に成り果てる時

建築物は部材の集合体です。その一つ一つに適正な位置や納め方を要求されています。当然ながら意味があっての事です。しかし、時折、ちょっとした位置がずれていたり、順序が逆になっている事で雨漏りの原因になってしまう事があります。

主に鉄骨系の建物に見受けられる仕上げ材に「下笠木」という部材があります。「したかさぎ」と読み、通常の笠木が上から被せているのに対し、下方に仕上げ面を向ける取付け方をする部材です。下がり壁などの躯体の端末を隠し、きれいな納まりに見せる役割も担っています。また、壁と天井との見切り材でもあり意匠上必要な部材なのですが欠点になる事も・・・。

下笠木※クリックで拡大します

納まり上、雨水などが侵入した場合は水の受け皿になりますし、結果として雨水の移動用の道になってしまう事もあります。シーリングの不具合などの事由により下笠木内に侵入した雨水は水位を上げながら横方向に広がり始めます。途中のジョイント部分から排水されてしまえば幸いですが端末部分はどうでしょうか。

外装仕上げの前に取り付ける事が多い下笠木ですが、端末(小口)部分が壁面に刺さる(壁面にぶつかる形で納まる)形状の場合、壁面に接触させる形はNGです。そういう納めにすると端末部分は外部に開放されていない状態のため、一部の雨水は壁の内部に向かう事になってしまいます。そこにALCパネル間の竪目地が存在していた場合、そこに雨水が流れ込む事があります。更にその流れて行く先が床面だったら雨水は床から浸出するしかありません。

フローリング濡れ※クリックで拡大します

今回は室内のフローリングに被害が出ていました。いつも湿気っていたようです。浸出する雨量は少なかったようで床面が水溜りになる事は一度もなかったと言います。しかし、長年の浸水の影響でフローリングは腐食していて指で突いただけで穴が開いてしまうほどでした。

下笠木は時に【軒樋】に変身出来る能力を有しているのです。壁の取合いの納め方には注意が必要です。下笠木の端部は壁面から少し離す事が理想ですが、端部と壁の隙間をシーリングで埋めてしまっては雨水が壁に向かう可能性を残してしまうのでお勧め出来ません。小口キャップを取り付けた上で壁の少し手前で納めて下さい。そして、その隙間の底だけをシーリングで処理してはいかがでしょうか。

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株式会社建水プロテクト|東京都練馬区の雨漏りと防水を考える会社

への字曲りの壁に隠されたもの

シャイン91 ※クリックで拡大します

ALC造の斜壁からの雨漏りの多さに関しては既にご承知の通りです。特にタイル貼り仕上げの場合は問題箇所が見えない事が多いため発見には時間が掛る場合もあります。

一般壁面の垂直に取り付けられたALCパネルと斜壁に取り付けられたALCパネルはどのように納まっているのでしょうか。専用のパーツがあるのでしょうか。雨仕舞は考えられているのでしょうか。

私たちが雨漏りの原因を調査し、改善を行った事例ではおおよその建物は下図のような納め方をされていました。

ALC斜壁 ※クリックで拡大します

パネルとパネルの間は現場施工によるモルタル充填となっていました。稀にALCパネルを斜めにカットしてシーリングで納められているものもありましたが。ほとんどはモルタル充填仕様です。当然ながらモルタルは収縮しますのでALCパネルとの継ぎ目には隙間が生じやすい事はご理解頂けると思います。仮に施工時に接着剤を使用していたとしても経年的に破断している事も考えられます。

仕上げが塗装の場合はその継ぎ目部分が横方向のヒビとなり目視出来ます。ヒビから必ず雨漏りするわけではありませんがそこを起点に塗膜が剥がれ始めることもあります。そして、タイル貼り仕上げの場合はそのヒビに気付く事が困難です。ご承知のようにタイルの目地材に止水効果は期待出来ませんし、斜壁部分のタイル目地は雨に浸食され無くなっている事が多く、降り注ぐ雨はALCパネルやモルタルに容易に到達しています。

斜壁は屋根とみなして施工する事をお勧め致します。最低でも防水処理を施して下さい。

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株式会社建水プロテクト|東京都練馬区の雨漏りと防水を考える会社

ALCと外巾木の危うい関係

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鉄骨ALC造の基礎周辺の納め方は業者さんによって様々ですが、お勧め出来ない形で納めているが故に雨漏りにつながっている案件を時々見かけます。

鉄骨サイディング張りの場合も木造の場合も端末の納め方には雨仕舞の原理原則が適用できます。しかし、ALC(t=100)版に於いては部材そのものに厚みがあるためか、基礎立上りの取り合いがほぼシーリング打設にて納められています。

ご存知ようにシーリング材は比較的早く劣化してしまいます。鉄骨サイディング張りや木造の端末がシーリングを用いない〝形”で処理しているのに比べると雨漏りのリスクはかなり高いと言わざるを得ません。

にも関わらず更に雨の影響を受けやすくしてしまっている形状が今回の事例です。モルタル外巾木は基本的にALC外面から更に外部に突出していますので壁面を流れ落ちてきた雨は外巾木の上で一度停滞します。巾木に限らず水平面に雨が引っかかった場合、雨を内部側に方向転換するきっかけを与える事になります。出っ張りがなければ雨は下方に流れ去ります。

巾木

外巾木の有無に関わらずALC造の1階の床面から雨水が浸出してくるパターンはここのシーリングに起因している事がとても多いと言えます。せめて巾木の天端はシーリングを覆わない形状で納めていれば補修はし易いかもしれません。

さて、それでは、どういった改善が考えられるでしょうか。仮にシーリングが劣化して止水効果が無くなってしまっても雨漏りしない形はあるのでしょうか?

発見は易し、推測は難し

柱の隙間

例えば上図のような納まりの鉄骨ALC造があったとします。緑の部分はスラブコンクリートを示し壁であるALC版に接して(※隙間埋めモルタルを含む)います。しかし、柱部分とALC版の間にはコンクリートやモルタルは存在せず空間になっています。幅は25㎜~30㎜程度の場合が多いと思います。

この空間は各階共通ですので、もしも、柱付近のALCパネルの破損などにより浸水が発生した場合、雨水は最下階(基礎天端や立上りコンクリート天端)まで容易に到達します。※B-B断面図参照

柱付近以外=壁付近で同じように浸水があった場合は各階の床面に具象が現れますし、壁面の仕上げにもシミやクロスのめくれなどの現象が現れますので発見は容易だと言えます。※A-A断面図参照

よって、柱付近の不具合が原因の場合の浸水(雨漏り)は1階の床面近くで発見される事が多くなります。そして、原因追及には時間が掛かる傾向があります。何階から浸入しているかを突き止めるのに手間取る為です。

柱の隙間 断面

以上のように、鉄骨ALC造の場合の柱付近の雨漏り原因調査にはちょっとした注意が必要です。また、鉄骨造サイディング仕上げやライトヘーベル張りの場合も似たような現象の雨漏り事例が発生していますので同様の推測も加えつつ調査に臨まなくてはなりません。

ちなみにA-A断面内で表記されている番号は代表的な施工順序です。図からも分かるように床のコンクリートの端部は後打ち(モルタル等)になります。よって、ALCとの接触部分やコンクリートとの接続部分は一体化されていない為、雨水が床面に広がった場合そういった隙間からも下階に浸出します。

また、鉄骨材の影響により雨水の滴る位置が変化するので浸入位置と浸出位置の関係を探るには先入観を持たずに根気よく調査を進める事が望まれます。特にデッキプレートとコンクリートとの隙間を流れる雨水は相当距離を移動していますのでそれなりに想像力を駆使しなくては解決するまでにただただ時間を浪費する結果となるでしょう。

鉄骨系雨漏りは、発見は易し、推測は難し

 

ご意見・お問い合わせ

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ALCは“Autoclaved Lightweight aerated Concrete” (高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート)の頭文字をとって名付けられた建材で、板状に成型したものを「ALCパネル」と呼びます。~ALC協会のホームページより~

いわゆるALCパネルですが、日本ではそれなりの数の建物に使用されている建材です。最近ではパネルが回転するロッキング構法という技術で変形追従性も高まっているという話です。

しかし、我々雨漏り関係の業界では必ずしもありがたい建材とは言えません。地震の影響が他の建物より大きく、結果として雨漏りになるケースがとても多いからです。更に、雨漏りだけにはとどまらず構造体として成り立たなくなるほどのケースもたまに見かけます。

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ALCパネルはパネルですから継ぎ目が存在します、まずはそこが外力(地震や風力や振動など)の影響で挙動します。その挙動幅が大きいとパネル同士がぶつかり合う為なのかパネル自体が割れたり欠損が生じたりします。外壁仕上げが塗装ならばまだしもタイルを貼っている場合は、挙動の影響で剥離したタイルが落下します。特にコーナー付近が影響を受けます。

ALCは建材的には柔らかいため、タイル補修などでエポキシ樹脂を用いたピンニング工法は意味がありません。地震などがあると周辺の基材(ALC)ごと引抜かれる事になるからです。よって、タイルが剥がれた場合は貼替えるか、部分的に塗装に変更するような選択を迫られます。

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ALCにはいろんなメリットがあるようです。軽いのに強度が高いとか、火災に強いとか、地震にも強い?など他にもあるようで、その利便性が世の中に普及した理由なのでしょう。でも、一番の理由は比較的安価な上に短い工期で建物が完成できるという事がその大きな理由だったのではないでしょうか。

確かに、新築時はそういった判断で良かったと思います。でも、これだけたくさんの不具合事例と向き合うと「ALCってどうなのよ?」と思ってしまうのは私だけでは決してないはず。しかも、そういった事例が常にあるにも関わらず使い続ける建築業界ってこれまたどうなのよ?って思っちゃうんですよね。

個人的には「現代の建材&納まり3大悪」っていうのが心の中にあるんですけどALCは・・・?どうなんでしょうか。いずれ機会があったらUPします。

そろそろALCにタイルを貼るのは止めませんか?

 

 

 

 

 

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