オーバーフローは「保険」になり得るか

・陸屋根

・ルーフバルコニー

・屋根の内樋

・ベランダ、室外機置き場、庇、など

排水口が詰まって満水事故が起こりやすい場所です。

特に屋根廻りの排水口は確認がしにくい場合が多く満水事故が発生することで初めて目詰まりが発覚することが多いように感じます。皆様の建物はいかがでしょうか?

満水による雨漏り事故は大量の雨水が室内などに浸入するという特徴があり被害も大きくなりがちです。場合によっては天井のボードなどが落下する事態にまで発展するので大変に危険です。

ベランダ付近は目が届くのでまめな清掃が可能ですが、出入り口が無い陸屋根だったり、屋上出入り口マンホールだけの屋根廻りは点検も疎かになりがちなのではないでしょうか。近くに落葉樹などが多い場合などは排水口が目詰まりしている可能性が高いと考えられます。

新築時からオーバーフロー設備を備えている建物もありますが、相対的にはまだまだ少ないと感じます。せめて、防水改修工事を行う際には同時にオーバーフロー設備の検討も必要なのではないでしょうか。

オーバーフローは基本的に壁面(立ち上がり)に設置されるのですが、その時に注意しなければならない事として貫通している防水層との接合部分の処理や外壁出口廻りの止水処理が挙げられます。また、木造の建物の場合は構造上主要な下地に影響を与えないように取り付ける工夫が必要です。新たな雨漏りの原因を作らないように配慮することが重要です。

以前、こんな事がありました。

3階建ての鉄骨ALC造の建物です。屋根は折板で内樋でした。周辺に落葉樹はありませんし土埃などもさほど多いとは言えないのですが何故か排水が滞って内樋を溢れた雨が3階室内に滝のように降り注いだ(ちょっと大げさかも)らしいのです。原因は何でしょうか?

排水口を塞いでいたのは何と!「フライドチキンの骨」、「ビンビールの栓」、「クルミの殻」、「果実の種」などでした。
飲兵衛(のんべえ)が屋根で晩酌をしていたのでしょうか!?

そんな 訳はありません。犯人はカラスでした。

ご存知のようにカラスは屋根のアンテナの上などで餌を食す習性があるようで、アンテナの下に食べカスが堆積しているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。その食べカスが雨で流され最終的に排水口に流れ着いたという訳です。それがベースになり細かいものまでどんどん堆積してしまい流れを止めてしまったという驚きの原因でした。

原因が何であれ、まめな清掃さえ行えば雨漏りリスクは大幅に減るのではないでしょうか。しかし、実際は、点検しにくい屋根や賃貸マンションのベランダなど、思うように確認できない部位もたくさんある事もまた事実です。

ベランダが原因の雨漏りは下階に被害を及ぼす事例がほとんどです。入居者同士のトラブルを未然に防ぐ意味でも日頃の維持管理の不備が原因だと言われないためにもオーバーフローは有効です。オーバーフローは予備の排水口ですので必ず活躍するかどうかはわかりません。でも、もしもの時に備えるという意味では「保険」と同じではないでしょうか。

備えあれば憂いなし

ですね。

取り付けはキャンペーン中のこちらまで

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

もしも、クーラーが発明されなかったら、建物の雨漏りも減っていた?

いわゆるクーラーは20世紀の大発明だと思えるのです。もしもクーラーが無かったら・・・、夏の生活はおそらく地獄でしょう。少なくとも私にはそう感じる次第です。皆さんはいかがでしょうか。(クーラーは生命維持装置だと言っている人もいます(笑)。)

冷暖房を兼ね備えたルームエアコンが普及して数十年、今や各室に1台づつ設置されているのは当たり前になりました。そのエアコンの数だけ冷媒管は壁を貫通しています(壁以外の経路もありますが)。木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など建物の構造を問わず貫通部分には雨漏りリスクが存在します。世界中に貫通孔はいくつあるのでしょう。その全てに雨漏りの可能性があるにも関わらずしっかりした対策を取っているものはどのくらいあるのでしょうか。

%e5%86%b7%e5%aa%92%e7%ae%a1【図1】

冷媒管は2本1組となっており、室外機用の電線と共に配管テープで括られている事が大半です。(※括りの中にドレン管も含まれる事が多いですが、別経路に設置される場合もあるので上図にはドレン管は表示していません。)

貫通部分はとかく雨漏りの原因になりがちです。まず、クーラーキャップの枠と外壁の間、クーラーキャップとエアコンパテの間、エアコンパテと冷媒管の間、ここまでは容易に理解できると思います。しかし、冷媒管を包む配管テープ内にも空洞が存在していますので条件次第ではその空洞を雨が流れて室内に侵入してしまう事があります。更に、冷媒管本体である銅管と保温材の隙間も雨は通る事が出来ますので調査時には注意が必要かと思います。

例えば、室内機設置箇所から上方(屋根など)に室外機を設置する場合は冷媒管が上方向から室内に入りますので仮に配管テープや保温材が劣化や破損していて雨が配管テープの内部に浸水する状況では雨漏りリスクが高まります。貫通箇所手前でトラップ形状にするなどの工夫をする方が無難です。

%e5%86%b7%e5%aa%92%e7%ae%a1%e5%90%91%e3%81%8d【図2】

%e5%86%b7%e5%aa%92%e7%ae%a1%e5%86%99%e7%9c%9f

配管化粧カバーを使用している場合は問題はありませんが配管テープで仕上げている場合はもう一つ注意する事があります。それは、テープの巻き方です。必ず下方から上方に向かって巻きつけなくてはなりません。屋根材などもそうですが、水下から施工するのは雨仕舞の基本です。

%e9%85%8d%e7%ae%a1%e3%83%86%e3%83%bc%e3%83%97

【図3】

お分かりかと思いますが、これを反対に巻き付けると雨が入り込みやすくなるという訳です。しかし、反対に巻かれている事は以外に多いです。空調の業者さんの中ではそういう常識が薄れてきているのでしょうか。

【図1】のようにクーラーキャップなどが設置されている場合はおそらく当初から計画的に設置されたスリーブだと考えられますが、後から必要性が発生した事で貫通孔を設け冷媒管を通した場合は、外壁と冷媒管の廻りの止水処理は雨漏り的に更に重要な部位になりますので慎重な止水処理をお願いしたいものです。

快適な生活の為にとりつけたエアコンが原因で、雨漏りによるストレスが発生したのでは本末転倒です。

%e5%86%b7%e5%aa%92%e7%ae%a1%e8%b2%ab%e9%80%9a

【ALC壁を貫通する後施工の冷媒管:保温材の内側を雨が通って室内側に到達していた】