タイル目地の止水力は? ゼロ⁉

「シーリングを打替えても雨漏りが改善しないのでタイルを剥がしてみた」

シーリングの打替えだけでは解決できなかった

 

この範囲に雨漏りの浸入個所が存在していることは判明しています。しかし、シーリングの打替えだけでは雨漏りは改善されませんでした。となると、タイルの下層に原因が在るはずです。ここは、表層の防水処理などではなく根本解決のためタイルを剥がすことに。

剥がしてみた やはり原因はタイルの下に隠されていた

 

当然ながら、躯体コンクリートとサッシの間はモルタルで埋められています。しかし、特に下地レベルでの止水処理を行った形跡はありません。タイルを貼ってシーリングを打設すれば雨は漏らないという判断だったのだと思われます。でも、実際に雨漏りは発生してしまいました。
タイル自体を雨が貫通するはずはありませんので、雨は目地材(目地セメント)に浸透し移動したと推測できます。場合によってはタイルと目地材の取り合いから毛細管現象等により浸入する雨もあることでしょう。そのいずれにしても雨はタイル目地付近から躯体側にしみ込むということです。

目地セメントは施工後しばらくの期間はそれなりの防水効果を発揮しますが、経年と共に止水力は消え失せ、細かい砂が固まっている程度の状況になっていると考えた方が実状に合っています。雨はスカスカ通り抜けているのです。ということは、下地の止水力を高めておかないことには危なくて仕方がありません。

雨漏りしやすいサッシの納まり

雨漏りに発展しにくいサッシ廻りの処理

 

コンクリート系の建物には二次防水層なるものがありません。よって、その代わりになる下地の止水処理が重要になります。後から改善するとなると多くの時間や予算を使うことにもなりかねません。そのひと手間が自らを救うことになるのではないでしょうか。

それから、外装タイル仕上げに止水力があると仮定することは雨漏りの原因を見定めるうえでは大きな過ちになると言っておきましょう。

『届かぬ想い』~深目地(沈み目地)のシーリングに於ける落とし穴~

シーリングはタイル目地の底まで届いていますか?
縦方向はもちろんですが、深目地(沈み目地)系のタイル外装では、雨は目地に沿って横方向にも移動します。その横目地の端部がサッシなどの開口部だった場合、そしてそこに不具合があった場合は雨漏りの原因になる可能性があります。

たとえ、目地端部に穴があったからといって必ず雨漏りするものではありません。躯体とサッシ部材の間が適正に処理されていればなんら問題はありません。しかし、この部位のシーリングの下層はサッシ埋めモルタルであることが多く止水機能が高いとは言えない部位です。

もしも、シーリング材が目地底まで到達していない場合、雨水はじわじわと内装に影響を及ぼしいつの間にか雨染みが発生していることでしょう。

こういった写真のような状況はさほど珍しいものではありません。これは、タイル貼り後の目地埋めをする時に端末部分に詰める目地セメントが少し不足していることなどが原因と考えられます。また、その後のシーリング作業では、タイルの角とサッシの隙間を埋めるべくマスキングテープで養生をしますので押し込みが弱いとシーリング材は目地の不足部分まで充填されない状況になります。

以上のように、目地に穴などがあった場合で雨漏りに至る条件としては、

➀化粧シーリングとタイル目地が密着していないため下地にまで雨水が到達する。
➁化粧シーリングが目地底まで到達していないためシーリング裏に雨水が廻りこんでしまう。
➂サッシと躯体間に捨てシーリングが無い。もしくはあっても劣化している。

などが考えられます。

➀の補足として、仮にタイルや目地材が密着していたとしても目地材の止水効果はあまり期待できないので内部に問題がある場合は深目地ほど雨漏りの危険が高まります。

上図は【「捨て打ち」は本当に❝捨て❞なのか】より引用

 

この部位も「タイル屋さん」と「シーリング屋さん」の❝取り合い❞部分ですので、新築施工中はお互いにギリギリの❝ライン❞でのせめぎ合いがあるのでしょう。管理者の眼力が問われますね。

 

 

浮きタイルは雨漏りの原因となり得るか?

外壁の仕上げにタイルを貼っている建物は数限りなく存在しています。しかし、見た目は同じでもその下層であるタイル下地の仕様は建物によって大きく違っているかもしれません。
最近のRC造の建物は、躯体にタイルを直貼りしているかのごとくタイル下地のモルタルが薄くなる傾向のようです。一昔前に比べ、躯体表面の不陸を小さく施工出来ることや薄付けモルタルなどの材料が進化したこともその要因だと思われます。

上の写真ではタイル下地モルタルが5度塗りされており、下地の厚みだけで55mmもありました。これほどまで塗り付けるには何か訳があったのかもしれませんが、総面積に対するいわゆる“浮き”の比率はとても少ない状況でした。

多くの建物の浮き補修を手掛けて、私が個人的に感じるところでは、“浮き”は最近の新しい建物の方が格段に多いと思うのです。確固たる理由は不明ですが、やはりそれは施工時の手間の掛け方の違いだと感じています。大事な工程が抜けているかもしくは不完全なのではないでしょうか。

というのも、おそらくは材料なども昔よりは今の方が研究され開発されているのでしょうから、材料による付着等の問題は最近の方が有利なはずです。そうなると、不備が疑われる部分は下地のサンダー等による「目粗し」や、その後の「清掃」ということになります。

パネコート(塗装型枠ベニヤ板)や剥離剤の影響もあることは否めませんが、パネコートを使用した建物のほとんどで浮きが多いという訳ではないようですし、剥離剤についてもほとんどの物件で使用されていると考えられますが、やはり全部の建物で多くの浮きが発生してるという因果関係は確認できていないようです。

以上のことから“差”があるとすれば施工方法という事になるのではないでしょうか。

写真の①、②、④の層には付着を強める“櫛引き”の跡が確認できます。少しでも塗り重ねるモルタルとの付着力を高めるためです。下地は、作業に支障がない程度にザラザラな方がよいのです。では、最初に塗り付けるモルタルにとっての下地であるコンクリートは平坦でもよいのでしょうか?

否。なるべくザラザラな方が良いに決まっています。
そこです。
そこの処理が甘いのでは?
「目粗し」と「清掃」がです。

そう思わざるを得ません。(個人の見解です)

単にタイルの浮きと言っても、タイルのみの浮きの場合や、下地モルタルとコンクリート間の浮き、下地モルタルの塗り重ね間の浮きなどいろいろです。

よく、タイルの浮きと雨漏りを直結して説明してくる方をお見受けしますが、タイルのみの浮きだけで雨漏りの原因と決めつけるのには違和感を感じます。確かに最近の建物はタイルの下がすぐコンクリートかもしれません。でも、コンクリートにクラックやジャンカなどの不具合が無いのであればタイルがどんなに浮いていても雨漏りにはならないはずです。

浮きは雨漏り原因の目安としては見逃せませんが、原因そのものではありません。そこからどういう経路で浸水しているかを読み解くことこそが重要なのです。

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