Q:塗装で雨漏りは改善する?しない?➡A:一時納まることがある

「外壁塗装すれば雨漏りも止まります」的な話しで改修工事に踏み切った方もいらっしゃることでしょう。現に、雨漏りの原因によっては、確かに一時雨漏りが治まることもあるので「外壁塗装して良かった」と思うことになります。しかし、それは、もしかしたら外壁のクラック等が雨漏り原因だった場合などで、そのクラックが塗装によって一時塞がれただけに他なりません。その後の時間の経過に伴いクラックは振動や収縮等の影響で挙動し再度塗膜にはクラックが再発することでしょう。改修工事の時に(信じ難いですが)クラック自体の止水処理を実施してなかった場合はクラックの再発とほぼ同時期に雨漏りが再発し原因が分からず途方に暮れるかもしれません。おそらくは新たな原因が生じたと思いこんだりして・・・。

上の写真はRC造の建物のクラックが再発したと思われる状況ですが、クラック自体の隙間は小さくて雨漏りの原因とは考えにくい状況です。しかし、念のためクラック周辺の塗膜を削ぎ落としてみます。(下写真)

すると、塗膜の表面だけのクラックのイメージとは異なり、それなりに雨漏りの原因と言える程度の“真実のクラック”が露わになったのです。この程度のクラックからでも雨水は室内側に移動浸出します。二次防水層の無いRC造などでは雨漏りの原因として有力な原因の一つと言えるでしょう。

塗装だけで雨漏りを改善させようとすることは、本来の雨漏りの原因を見失わせるだけでなく、雨漏り改善の機会をも先延ばしにさせてしまいます。そして、後日、遅ればせながらその原因に気付けたとしても部分補修を行う事になれば、せっかくの全体改修で綺麗になった外観にも残念な結果を及ぼすことにもなりかねません。その真実を見抜ける方に依頼したいものです。

✕ 塗装 ➡ 雨漏り改善

◎ 雨漏り改善 ➡ 塗装

浮きタイルは雨漏りの原因となり得るか?

外壁の仕上げにタイルを貼っている建物は数限りなく存在しています。しかし、見た目は同じでもその下層であるタイル下地の仕様は建物によって大きく違っているかもしれません。
最近のRC造の建物は、躯体にタイルを直貼りしているかのごとくタイル下地のモルタルが薄くなる傾向のようです。一昔前に比べ、躯体表面の不陸を小さく施工出来ることや薄付けモルタルなどの材料が進化したこともその要因だと思われます。

上の写真ではタイル下地モルタルが5度塗りされており、下地の厚みだけで55mmもありました。これほどまで塗り付けるには何か訳があったのかもしれませんが、総面積に対するいわゆる“浮き”の比率はとても少ない状況でした。

多くの建物の浮き補修を手掛けて、私が個人的に感じるところでは、“浮き”は最近の新しい建物の方が格段に多いと思うのです。確固たる理由は不明ですが、やはりそれは施工時の手間の掛け方の違いだと感じています。大事な工程が抜けているかもしくは不完全なのではないでしょうか。

というのも、おそらくは材料なども昔よりは今の方が研究され開発されているのでしょうから、材料による付着等の問題は最近の方が有利なはずです。そうなると、不備が疑われる部分は下地のサンダー等による「目粗し」や、その後の「清掃」ということになります。

パネコート(塗装型枠ベニヤ板)や剥離剤の影響もあることは否めませんが、パネコートを使用した建物のほとんどで浮きが多いという訳ではないようですし、剥離剤についてもほとんどの物件で使用されていると考えられますが、やはり全部の建物で多くの浮きが発生してるという因果関係は確認できていないようです。

以上のことから“差”があるとすれば施工方法という事になるのではないでしょうか。

写真の①、②、④の層には付着を強める“櫛引き”の跡が確認できます。少しでも塗り重ねるモルタルとの付着力を高めるためです。下地は、作業に支障がない程度にザラザラな方がよいのです。では、最初に塗り付けるモルタルにとっての下地であるコンクリートは平坦でもよいのでしょうか?

否。なるべくザラザラな方が良いに決まっています。
そこです。
そこの処理が甘いのでは?
「目粗し」と「清掃」がです。

そう思わざるを得ません。(個人の見解です)

単にタイルの浮きと言っても、タイルのみの浮きの場合や、下地モルタルとコンクリート間の浮き、下地モルタルの塗り重ね間の浮きなどいろいろです。

よく、タイルの浮きと雨漏りを直結して説明してくる方をお見受けしますが、タイルのみの浮きだけで雨漏りの原因と決めつけるのには違和感を感じます。確かに最近の建物はタイルの下がすぐコンクリートかもしれません。でも、コンクリートにクラックやジャンカなどの不具合が無いのであればタイルがどんなに浮いていても雨漏りにはならないはずです。

浮きは雨漏り原因の目安としては見逃せませんが、原因そのものではありません。そこからどういう経路で浸水しているかを読み解くことこそが重要なのです。

タイルの浮きと雨漏りの関係

商売柄、タイル剥離落下の事案をよく見かけます。下地コンクリートの爆裂やクラックなどが起因となっているタイル剥離落下事例は沢山ありますが下地の劣化とは無関係にタイル剥離が発生することもあります。

コンクリート、モルタル、下地調整材、接着剤、そしてタイルはそれぞれの温湿度膨張係数や弾性係数などに差があるため自ずと伸縮率が異なります。日射や湿潤時に発生する材料間の伸縮量の差による負荷を吸収できない場合などに“剥離”すると考えられています。そして、剥離の面積が増えてくると“浮き”として認識されます。

浮きが発生する可能性がある位置はそんなに多くはありません。※下図参照
①コンクリートと下地不陸調整材の間(下地調整材が無い場合はこの限りではない)
②下地不陸調整材とタイル接着剤の間
③タイル接着剤とタイルの間
(④コンクリートとタイル接着剤の間※下地不陸調整材が無い場合)
※①、②は、タイル下地がモルタル塗りの場合は不陸調整材と置き換えて下さい。

それぞれの部材間に於いて異なる伸縮率が存在するため追従できない部位で浮きが発生すると考えられるということは、セメント系材料である下地調整材や接着剤はメーカー毎に成分が異なっていますしタイルは材質や意匠性に於いて多種多様な種類が存在するためそれらの組み合わせの数は想像を超えます。よって、浮きがどの部位で発生するかを読み解くことは困難であると言わざるを得ません。

とは言え、タイルとタイル接着剤の相性は概ね良好な場合が多くその部位の剥離事例は比較的少ないように思われます。また、弾性接着剤を用いることで剥離落下の危険性は改善されているという話も多く聞き及ぶところであります。

さて、その“浮き”の空間に雨水が入り込むとどうなるのでしょう。そして、浮きと雨漏りに因果関係はあるのでしょうか?

ほとんどの浮きタイル面では歪により目地廻りに細かいヒビやタイル面との剥離箇所が多数存在していて雨水が浮きタイルの躯体側空間に到達することは容易だと考えられます。ちなみに、そうした内部湿潤状態のまま日射の影響を受ければ乾燥面と湿潤面とでは温度差が生じる(※)ため部材伸縮のタイミングに時差が生じ剥離が助長されます。浮きは放っておくと徐々に成長してしまうのです。

雨水はタイルと躯体の間に到達しているのであるから雨漏りの危険性も高まるように感じます。しかし、躯体にクラックなどの不具合が無ければ雨は建物に浸入のしようがありません。雨水は空洞内を下方に流れどこかの隙間から排出されているはずです。その時流れ出た雨水にコンクリートなどから滲出した石灰質が混ざると外壁にエフロという形で現れることもあります。

結果、タイルが浮いているだけという状態では雨漏りに発展することはないと言えます。よって、サーモグラフィーなどでタイルの浮きを探し当てたとしても雨漏りまで改善できる条件が整うとはとても思えません。雨漏りは、適正な「雨漏り調査」によってのみ原因を解明することが可能なのではないでしょうか。

 

(※)この時の温度差をサーモグラフィーで読み取ることで浮き部分が分かるとされている。

 

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。