雨漏り原因になり得る「アゴ」と「水切り目地」の憂鬱~RC編~

【地味だが良い仕事をしている水切り目地】

読んで字の如く、水(雨水)の表面張力を断ち切って建物を保護しているのが水切り目地である。水切り目地は、建物の外部のあちこちに存在し自らの役目を果たしている。鉄筋コンクリート造の建物に於いて水切り目地は型枠の組立て作業時に仕込まれる。基本的にコンクリートの下面に組み込まれ、その上に配筋が組み立てられるので、目地棒の取付け忘れがあった場合は再取り付けが困難なため施工時に忘れることが無いよう管理項目に入っていることも多い。その目地は、「軒天先端付近」、「窓庇先端付近」、「パラペットあご下」、時には「梁下」に多く取り付けられている。全ては、建物の壁面に雨を到達させないために計画されている。木造建築では当たり前の納まりもRC造では意図して取り付けなければそのシステムは機能しない。故に取付け忘れには注意しなければならない。また、発泡樹脂系の目地棒で施工した場合、鉄筋等の接触で破損することがあるので作業中も注意が必要である。もしも、水切り目地を取付け忘れたり、もしくは、将来必要になってから水切り目地を設けようとするならば、コンクリートカッターや斫りのみなどを駆使しつつ、上向きで行わなければいけない超難易度の高い作業を覚悟しなければならない。

 

 

【水切り目地はRC造に於いて数少ない雨仕舞である】

コンクリート面に必ずしもモルタルを塗ることが当たり前ではなくなってからのRC造建築に於いて、水切り目地は有効な雨仕舞と言える。モルタル塗り仕上げが当たり前だった頃は「オダレ」という形状で雨水を断ち切っていた。型枠の精度が高くなって打ち放しの工法が当たり前になってからはオダレに代わって水切り目地を用いることになるが、二次防水が存在しないRC造にとって雨の流れを誘導できる一つの知恵だと言える。

そういった雨仕舞上有効な水切り目地だが、たまに存在しない建物を見かける。そして、それが雨漏りにつながっている場合もある。上図に於いて、パラペットのアゴ下に水切り目地が無く、しかも微妙にアゴ下が逆勾配だった時、雨水は表面張力によってアゴ下をつたい流れ入隅付近に到達する。その部分の多くは防水層の立上り端末部分であり、経年劣化によって浸水の可能性が高くなっている部分でもある。図らずもそういった現場に何度か遭遇している。よもや、施工時にアゴ下に水切り目地を入れ忘れた作業員や、気づかなかったであろう管理者は、それによって将来雨漏りの原因になるなど考える由もありはしないだろう。当然ながら責任を問うことも出来はしない。だが、RC造でのせっかくの数少ない雨仕舞をみすみす見逃してしまった罪は軽くない。

とは言っても施工技術も進化しており、後日可能な対策にも選択肢が増えている。パラペットに関しては、ウレタン塗膜防水などを実施するタイミングでアゴテープなどを組み入れれば水切り目地と同じ効果を付与することが出来るようになった。ただ、アゴテープが必要な建物だと気が付かないことには改善も望めない。

 

【やはり敵は中性化なのか?】

水切り目地が雨仕舞に有効な事は理解していただけたと思うが、それによって生じる弊害もある。水切り目地のサイズは、幅が15mm~20mm程度、高さが10mm~20mm程度の物が多く、一般的には15mm×15mm程度の片勾配の目地棒を打ち込むことが多いと思う。ということは、その部分は、それ以外のコンクリート下面とは相対的にコンクリートのかぶり厚さが少なくなる(コンクリートの中性化による鉄筋への影響はコンクリート厚さに比例するため、かぶり厚さの減少は鉄筋保護力の減退も早まる)ことになる。

鉄筋表面からコンクリート表面までの寸法を「かぶり厚さ」といい、数値は部位によってそれぞれ決められている。その数値を勝手に減らしたりすことはできない。しかし、各所目地棒の付近についての見解はグレーゾーンに思えてならない。例えば、パラペット部分のかぶり厚さの基準は30mm(仕上げ無しの場合)となっている。本来であれば左図のように目地底から既定の寸法が必要だと思われるが、右図のようにパラペットの底面から30mmとなってしまっていることが少なくない。もっとひどい場合は鉄筋と目地棒がくっついてしまっている場合もある。その場合、鉄筋は外気に極めて近い状態になっており、不動態被膜も形成されず腐食は型枠解体直後からすぐに始まることになる。

 

【水切り目地の憂鬱】

コンクリートの中性化による劣化はかぶり厚さによってその耐用年数が決まるので、かぶり厚さの減少は鉄筋のの腐食の進行に影響する。よって、目地底に鉄筋が接触しているなどは論外である。アゴ下が爆裂する最大の原因は中性化のよるものが多いと思うがその要因は人的なものが多分に含まれていると言えるのではないだろうか。

建物を守るために設置される水切り目地だが、正しく取り付けていない場合は劣化の原因にもなるということを理解した上での作業を望んで止まない。

タイル目地の止水力は? ゼロ⁉

「シーリングを打替えても雨漏りが改善しないのでタイルを剥がしてみた」

シーリングの打替えだけでは解決できなかった

 

この範囲に雨漏りの浸入個所が存在していることは判明しています。しかし、シーリングの打替えだけでは雨漏りは改善されませんでした。となると、タイルの下層に原因が在るはずです。ここは、表層の防水処理などではなく根本解決のためタイルを剥がすことに。

剥がしてみた やはり原因はタイルの下に隠されていた

 

当然ながら、躯体コンクリートとサッシの間はモルタルで埋められています。しかし、特に下地レベルでの止水処理を行った形跡はありません。タイルを貼ってシーリングを打設すれば雨は漏らないという判断だったのだと思われます。でも、実際に雨漏りは発生してしまいました。
タイル自体を雨が貫通するはずはありませんので、雨は目地材(目地セメント)に浸透し移動したと推測できます。場合によってはタイルと目地材の取り合いから毛細管現象等により浸入する雨もあることでしょう。そのいずれにしても雨はタイル目地付近から躯体側にしみ込むということです。

目地セメントは施工後しばらくの期間はそれなりの防水効果を発揮しますが、経年と共に止水力は消え失せ、細かい砂が固まっている程度の状況になっていると考えた方が実状に合っています。雨はスカスカ通り抜けているのです。ということは、下地の止水力を高めておかないことには危なくて仕方がありません。

雨漏りしやすいサッシの納まり

雨漏りに発展しにくいサッシ廻りの処理

 

コンクリート系の建物には二次防水層なるものがありません。よって、その代わりになる下地の止水処理が重要になります。後から改善するとなると多くの時間や予算を使うことにもなりかねません。そのひと手間が自らを救うことになるのではないでしょうか。

それから、外装タイル仕上げに止水力があると仮定することは雨漏りの原因を見定めるうえでは大きな過ちになると言っておきましょう。

Q:塗装で雨漏りは改善する?しない?➡A:一時納まることがある

「外壁塗装すれば雨漏りも止まります」的な話しで改修工事に踏み切った方もいらっしゃることでしょう。現に、雨漏りの原因によっては、確かに一時雨漏りが治まることもあるので「外壁塗装して良かった」と思うことになります。しかし、それは、もしかしたら外壁のクラック等が雨漏り原因だった場合などで、そのクラックが塗装によって一時塞がれただけに他なりません。その後の時間の経過に伴いクラックは振動や収縮等の影響で挙動し再度塗膜にはクラックが再発することでしょう。改修工事の時に(信じ難いですが)クラック自体の止水処理を実施してなかった場合はクラックの再発とほぼ同時期に雨漏りが再発し原因が分からず途方に暮れるかもしれません。おそらくは新たな原因が生じたと思いこんだりして・・・。

上の写真はRC造の建物のクラックが再発したと思われる状況ですが、クラック自体の隙間は小さくて雨漏りの原因とは考えにくい状況です。しかし、念のためクラック周辺の塗膜を削ぎ落としてみます。(下写真)

すると、塗膜の表面だけのクラックのイメージとは異なり、それなりに雨漏りの原因と言える程度の“真実のクラック”が露わになったのです。この程度のクラックからでも雨水は室内側に移動浸出します。二次防水層の無いRC造などでは雨漏りの原因として有力な原因の一つと言えるでしょう。

塗装だけで雨漏りを改善させようとすることは、本来の雨漏りの原因を見失わせるだけでなく、雨漏り改善の機会をも先延ばしにさせてしまいます。そして、後日、遅ればせながらその原因に気付けたとしても部分補修を行う事になれば、せっかくの全体改修で綺麗になった外観にも残念な結果を及ぼすことにもなりかねません。その真実を見抜ける方に依頼したいものです。

✕ 塗装 ➡ 雨漏り改善

◎ 雨漏り改善 ➡ 塗装

『届かぬ想い』~深目地(沈み目地)のシーリングに於ける落とし穴~

シーリングはタイル目地の底まで届いていますか?
縦方向はもちろんですが、深目地(沈み目地)系のタイル外装では、雨は目地に沿って横方向にも移動します。その横目地の端部がサッシなどの開口部だった場合、そしてそこに不具合があった場合は雨漏りの原因になる可能性があります。

たとえ、目地端部に穴があったからといって必ず雨漏りするものではありません。躯体とサッシ部材の間が適正に処理されていればなんら問題はありません。しかし、この部位のシーリングの下層はサッシ埋めモルタルであることが多く止水機能が高いとは言えない部位です。

もしも、シーリング材が目地底まで到達していない場合、雨水はじわじわと内装に影響を及ぼしいつの間にか雨染みが発生していることでしょう。

こういった写真のような状況はさほど珍しいものではありません。これは、タイル貼り後の目地埋めをする時に端末部分に詰める目地セメントが少し不足していることなどが原因と考えられます。また、その後のシーリング作業では、タイルの角とサッシの隙間を埋めるべくマスキングテープで養生をしますので押し込みが弱いとシーリング材は目地の不足部分まで充填されない状況になります。

以上のように、目地に穴などがあった場合で雨漏りに至る条件としては、

➀化粧シーリングとタイル目地が密着していないため下地にまで雨水が到達する。
➁化粧シーリングが目地底まで到達していないためシーリング裏に雨水が廻りこんでしまう。
➂サッシと躯体間に捨てシーリングが無い。もしくはあっても劣化している。

などが考えられます。

➀の補足として、仮にタイルや目地材が密着していたとしても目地材の止水効果はあまり期待できないので内部に問題がある場合は深目地ほど雨漏りの危険が高まります。

上図は【「捨て打ち」は本当に❝捨て❞なのか】より引用

 

この部位も「タイル屋さん」と「シーリング屋さん」の❝取り合い❞部分ですので、新築施工中はお互いにギリギリの❝ライン❞でのせめぎ合いがあるのでしょう。管理者の眼力が問われますね。

 

 

外部のモルタル巾木は目隠しとしては有効だが雨漏り的には弊害になりがち

以前、モルタルで巾木は「無用の長物」なのか?でも出巾木の意味について考えましたが、今回も出巾木の弊害について考えたいと思います。

基本的に出巾木は“目隠し”の要素が多いという事です。
特にRCの建物では基礎から1階の土間付近にかけて打継が多く発生します。それ自体は致し方ない事で理解できます。更に、建物の外観的にも巾木があった方がまとまりが感じられます。要は、納め方と意匠上の都合で出巾木は必要だと考えられています。(下図参照)

しかしながら、出巾木は雨漏りの原因になることも多いので、私たちは多くの建物に於いて出巾木の撤去を行いながら雨の入口を塞いできました。雨の入口が出巾木の中にあるためです。

確かに、出巾木の上端をシーリング処理すれば一時的に雨漏りは改善するかもしれません。でも、ご存知のように、シーリング材は防水材ではありませんので耐久力が弱いですから割と早めに再発することは容易に想像できます。また、水平面に用いたシーリング材が垂直面のそれより雨水の影響を受けやすく劣化が早いことは周知の通りです。

モルタルで巾木は「無用の長物」なのか? より引用)

上図右側のように、防水層(緑)が出巾木端末で終わっている案件をよく見かけます。意外にも改修工事から間もない案件でも確認されます。いわゆる防水工と塗装工の取り合い部位になることで、どちらの作業でも手を付けなかったようです。おそらく、壁面の塗装を先に施工したのでしょう。防水工は塗膜に防水材やシーリングを乗せることをためらった可能性が考えられます。この場合、防水工が先に施工し端末を然るべき仕様で納めておくことが理想です。監理者は工期以外にも目を配る必要があります。

塗装工事や防水工事の直後では、それらしい隙間も何となく埋まっていますので発見は容易ではありません。しかし、実際は出巾木の裏に雨の通り道が残置されたままになっています。浸入した雨水は室内に移動し下階などに浸出するという理屈です。

そもそも、RCの建物には二次防水が存在しません。せめてサッシ廻りの捨てシーリングのように打継部分の止水処理を十分に確認してからの巾木施工を願うものです。

 

浮きタイルは雨漏りの原因となり得るか?

外壁の仕上げにタイルを貼っている建物は数限りなく存在しています。しかし、見た目は同じでもその下層であるタイル下地の仕様は建物によって大きく違っているかもしれません。
最近のRC造の建物は、躯体にタイルを直貼りしているかのごとくタイル下地のモルタルが薄くなる傾向のようです。一昔前に比べ、躯体表面の不陸を小さく施工出来ることや薄付けモルタルなどの材料が進化したこともその要因だと思われます。

上の写真ではタイル下地モルタルが5度塗りされており、下地の厚みだけで55mmもありました。これほどまで塗り付けるには何か訳があったのかもしれませんが、総面積に対するいわゆる“浮き”の比率はとても少ない状況でした。

多くの建物の浮き補修を手掛けて、私が個人的に感じるところでは、“浮き”は最近の新しい建物の方が格段に多いと思うのです。確固たる理由は不明ですが、やはりそれは施工時の手間の掛け方の違いだと感じています。大事な工程が抜けているかもしくは不完全なのではないでしょうか。

というのも、おそらくは材料なども昔よりは今の方が研究され開発されているのでしょうから、材料による付着等の問題は最近の方が有利なはずです。そうなると、不備が疑われる部分は下地のサンダー等による「目粗し」や、その後の「清掃」ということになります。

パネコート(塗装型枠ベニヤ板)や剥離剤の影響もあることは否めませんが、パネコートを使用した建物のほとんどで浮きが多いという訳ではないようですし、剥離剤についてもほとんどの物件で使用されていると考えられますが、やはり全部の建物で多くの浮きが発生してるという因果関係は確認できていないようです。

以上のことから“差”があるとすれば施工方法という事になるのではないでしょうか。

写真の①、②、④の層には付着を強める“櫛引き”の跡が確認できます。少しでも塗り重ねるモルタルとの付着力を高めるためです。下地は、作業に支障がない程度にザラザラな方がよいのです。では、最初に塗り付けるモルタルにとっての下地であるコンクリートは平坦でもよいのでしょうか?

否。なるべくザラザラな方が良いに決まっています。
そこです。
そこの処理が甘いのでは?
「目粗し」と「清掃」がです。

そう思わざるを得ません。(個人の見解です)

単にタイルの浮きと言っても、タイルのみの浮きの場合や、下地モルタルとコンクリート間の浮き、下地モルタルの塗り重ね間の浮きなどいろいろです。

よく、タイルの浮きと雨漏りを直結して説明してくる方をお見受けしますが、タイルのみの浮きだけで雨漏りの原因と決めつけるのには違和感を感じます。確かに最近の建物はタイルの下がすぐコンクリートかもしれません。でも、コンクリートにクラックやジャンカなどの不具合が無いのであればタイルがどんなに浮いていても雨漏りにはならないはずです。

浮きは雨漏り原因の目安としては見逃せませんが、原因そのものではありません。そこからどういう経路で浸水しているかを読み解くことこそが重要なのです。

RC造 サッシ廻りの捨て打ちシーリングは重要

通常、RC造外壁に於いて通気工法という概念はありません。よって、透湿防水紙とも無縁ですし、そもそも二次防水という考えがありません。外壁の雨をしのぐには外壁の躯体コンクリート自体の防水性能によるところが大です。然るに、大きめのクラックやジャンカなどが原因で雨漏りになるケースも少なくありません。

RC造にも開口部や配管などの貫通部はあります。そして、その部分の止水処理はシーリングに頼ることが多いと言わざるを得ません。しかし、シーリング材の耐用年数には限界があります。RC造に於いてシーリング材の劣化は雨漏りの発生と直結していると考えなけらばならないでしょう。

仮にシーリング材が劣化しても、なるべく雨の流れや排出を考慮した納まり“雨仕舞”を意識して部材の取り付けを行うことが大切です。また、開口部や貫通部の止水処理については化粧シーリングの下層に“捨てシーリング”を行う方が無難だと言えます。

上の写真は雨漏りした出窓の上部のシーリングを撤去した状況です。出窓の庇部分の端末立ち上がりが躯体外面近くで納まっていることも雨漏りの原因になったと考えられます。シーリングの劣化に伴いタイルとシーリングの間が剥離していました。その隙間から浸入した雨水は部材を腐食せしめさらに室内側への雨水の浸入を助長していくのです。

もし、“捨てシーリング”が存在していればそうはならなかった、もしくは、次の化粧シーリングの打替え時期まで雨漏りの発生を食い止められたかもしれません。理想の納まりは開口部や出窓の上部に直接雨が当たらない仕様が良いのですが、それがかなわなくともせめて“捨てシーリング”だけでも実施しておくことが望ましいと言えるでしょう。そのためにはサッシ部材の取り付け位置もそれなりに勘案しておく必要があるのです。でも、だからといって、“捨てシーリング”も経年劣化することをお忘れなく。

今回の事案は「B」の納まりとなっていました。

水切りタイル?は ❝有り❞ か ❝無し❞ か

当時、RC造の新築の建物に於いて、サッシの水切り金物を使用せず外壁のタイルを加工して代用するという意匠設計が一部の設計士の間で流行ったようです。同年代の建物で同じような納まりをよく見かけます。今もこのような納め方をしているかどうかはよく分かりませんが、明らかなのは雨仕舞的な判断の中でこの納め方を“有り”か“無し”かを問うのであれば、答えは“無し”ということです。

理由は、タイルの目地は経年に伴い劣化し止水性能は弱まりますし、タイルの下地やサッシ廻りはモルタルだと考えられますが雨を食い止めるほどの水密性は無いと思われます。結果、浸透した雨水は躯体コンクリートに到達し室内側にも移動浸入してしまう危険が高まることになるからです。

こういった納め方が原因の雨漏りには数知れず遭遇してきました。ほとんどの場合、例外なく雨水の浸入口となっていました。目地セメントやモルタルは水を通さないのでは?と問われることがよくあります。しかし、単にモルタルと言ってもセメントと砂の比率が違うだけで止水性能には差があります。しかも、雨水は必ずしもモルタル内に浸透して移動している訳ではありません。どちらかと言えば、雨水は「モルタルとサッシの間」とか「モルタルとコンクリートの間」を主に移動するのであって、モルタル自体の雨水浸透率は大きな問題ではないと考えられます。

更に雨漏りを助長させる納め方としてタイルとサッシ間のシーリングの向きが挙げられます。タイルの上面の延長となる形でシーリングを施工すると雨水の影響を強く受けるため劣化も早くなります。シーリングは“防水材”ではありません。どんな場合も水の影響を受けにくい形で施工されることが望まれます。結果として耐用年数も延びますし、それによって雨漏りリスクも減ることは言うまでもありません。

 

部屋の中央付近からの雨漏りは「ダメ穴」の存在を疑う

天井点検口から覗くとスラブコンクリートとダメ穴コンクリートの継ぎ目に雨染みが確認されました。

ダメ穴はコンクリート壁面から離れた位置(構造上の反力点:スラブ全長の1/4付近)に取り付けられることが多いため、それが原因の雨漏りは壁付近ではなく部屋の中央付近から雨が漏れ出すので驚きと同時に雨漏り原因が推測がしにくい事例となる。

というのも、上階のコンクリート床面上を雨水がある程度横方向に移動した後に下階に落下すると考えられるので浸入口の推測範囲も広くなり推測数も多めになりがちだからである。しかも、調査水が横移動する時間差も推測しにくい故、散水時間や待機時間の設定は経験値だけを頼りにすることもやむを得ない。よって、原因の特定にはそれなりの時間が必要という事になる。

ダメ穴は躯体構築時の主に型枠材を転用荷揚げするために設置されているが、基本的に室内ということで、継ぎ目にしっかりした止水処理を行っていないこともしばしばである。

いずれにせよ、被疑箇所を順次確認し浸入口の可能性を打ち消す作業を繰り返すしか原因に到達する手段はない。可能であれば上階に床下点検口を取り付け、床下を目視できれば結論は早期に導き出されるはずであるが上階が空室でもない限りなかなか希望は叶わない。

もう一つ忘れてならない事は上階の床下の空間に雨水が存在しているという事である。湿気が充満することで起こり得る弊害は下階より深刻なのかもしれない。

繰り返す雨漏り

同じ場所から繰り返し雨漏りが発生している場合の原因は以下の理由が考えられる。


①雨漏りの原因を改善できていない

②一つの原因は改善されているが他にも原因が残っている

③改善させた部分に再度不具合が発生している

①の場合は、雨漏り原因の見極めが間違っていた場合などで、そもそもの原因箇所の処置は行っておらず無関係の場所を補修していた場合などである。原因が改善されていないので補修前と状況は変わっておらず雨漏りが止まることはない。

②の場合は、いかにも見た目にも怪しい部位があったので簡易補修などで対応してみたが雨漏りは止まらなかった場合である。補修箇所自体は間違っていないので浸出量は減っているかもしれない。「複数浸入雨漏り」である。

③の場合は、浸入位置も確定し既にその部位の適正処理を行っていて、しばらくの間は雨漏りが改善されていたが経年と共に再発する場合である。挙動箇所にあるクラック部分が原因だったときなどにそういった傾向が見られる。補修後数年で再発した場合は当時の原因箇所も確認してみる必要がある。

原因位置の見極め間違いの場合はさておいて、複数浸入雨漏り「経年性再発雨漏り」にはたまに遭遇する。どちらも対応には苦労することが多い。特に、二次防水層が存在しない鉄骨ALC系の建物や鉄筋コンクリート造の建物はおおよそ同じ部位にクラックが再発するので厄介と言える。二次防水層が無いということは、外壁の不具合はいきなり致命的な雨漏りの原因になり得るということであるから。

建物に発生するクラックにはいろんな原因がありますが、大別すると収縮系クラック(乾燥、自己ひずみ)と挙動系クラック(構造ひび割れ)に分かれる。

鉄筋コンクリート造における収縮系クラックが初期段階で多く発生するのに比べ、挙動系クラックは地震や強風など外力の影響を受けて発生している。よって、建物が存在する限り挙動系のクラックも発生し続けると言えるのだ。そして、それは同じような位置で発生している。

それぞれの建物には、それぞれの建物の特性があり、外力の影響によって発生するクラックの位置はほぼ決まっていると思われる。なので、クラックを補修してもいずれまた補修材が破断して雨漏りが再発することは何ら不思議ではない。むしろ自然なことなのかもしれない。

私たちは、それぞれの事象に合った補修方法を真剣に考え検討し、長所も短所も理解した上でご提案するように心掛けなければならない。

 

 

防水専門 VS 雨漏り専門

小屋裏がこんなにひどい目に遭っています。この上は屋根(陸屋根)です。信じられないかもしれませんが、屋根の防水改修は数年前にFRP防水にて実施されています。

この小屋裏天井面クラックのエポキシ樹脂っぽい処理は防水改修工事以前のものなのか、それとも防水改修工事後のものなのかはオーナー様も分からないらしいです。はっきりしているのは、今も雨漏りは止まっていないという事。

不自然だと思いませんか?屋根の防水工事を行っているのにどうして室内側から止水処理を行わなければならなかったのでしょうか。雨漏りを改善させるためには雨の入り口側で修繕することが基本だというのに。(※地下室の場合は内側からも止水処理しますが)

防水工事施工前にこの止水処理行ったと仮定した場合、先ずは屋根の防水をしなさいって話じゃないですか。最初に内部(雨の出口側)から止水を試みるという意味がよく分かりません。結果、雨漏りが改善しなかったので全体の防水を実施することになったのでしょうか。

もしくは、FRP防水を実施したにも関わらず雨漏りが止まらないのでこのような所業に打って出たのでしょうか。それって、防水の品質の問題?それとも防水範囲以外に原因が存在していた?未だに原因は不明であり、オーナー様は憂鬱な日々を過ごされています。

【防水施工技能士】の資格は厚生労働省が主催する国家資格であり防水工事に携わる人々には必須資格とも言えます。対外的に技術の確かさを判断する基準にもなると思います。でも、技術が高くてもこと雨漏りとなるとその技術を活かせない事もあるようです。「雨漏りの原因を改善する事」と「信頼に値する防水工事を行う事」とはそもそも目的が違っています。どんなに素晴らしい防水工事を行っても、雨漏りの原因から外れていては何も改善しません。

防水施工技能士が防水の専門家だとすれば【雨漏り診断士】は雨漏りの専門家です。
雨漏り診断士は各種防水の特性はもとより建物の構造や納まり、外装材や二次防水など、見えない部位まで含めて総合的に雨漏りの原因を読み解きます。防水施工技能士の目的が「高品質の防水工事」だとすれば、雨漏り診断士の目的は「雨漏りの原因を突き止め雨漏りを改善する事」です。そのためには、その原因を突き止めるためには、雨漏りの原因調査が必要不可欠です。冒頭の写真の案件も、雨漏りの原因調査を行っていればこんなにも迷走することは無かったのではないでしょうか。

雨漏り診断士が雨漏りの原因を突き止め、防水施工技能士がそこの防水工事を行う。それはいいことだと思います。そうは思いますが、雨漏りの改善には防水工事だけでは改善しないことも多いのです。原因の数だけ修繕方法があると言っても過言ではありません。雨漏り診断士は雨漏りの原因調査だけを受け持つと思われている方もいると思いますが、原因調査に留まらず最適な修繕方法まで検討してこそ頼れる雨漏り診断士と言えるのではないでしょうか。

 

 

 

 

外部の雨漏りは軽視されがち ベランダの下はベランダ?

一口に防水と言っても種類や仕様は様々です。

一般的に屋根部分と庇部分では防水の仕様が違いますがその差の根拠は何なのでしょうか?

一例として、ウレタン塗膜防水の場合、屋根部分は補強クロスも入りますし防水層の厚みも庇部分と比較して厚く設定されています。保証期間は10年が一般的です。(※条件有り)

そして、庇部分の仕様の多くは補強クロスは無く保証期間は5年程度とされる事が多いようです。

もちろん、庇部分でも10年保証の仕様で施工して良い訳ですが多くの場合予算の関係などの理由で5年保証仕様に落ち着くように感じます。

同じ建物で同じ環境なのに庇やベランダが屋根部分の防水仕様より簡易な仕様に設定される理由は何なのでしょうか?

決定的に違うのはその防水範囲の直下が部屋か部屋でないかという事に尽きます。

極論的に言ってしまえば、ベランダや解放廊下は雨漏りしてもそこはベランダや解放廊下であり室内のそれよりは影響(被害)が少ないので大事にならないという事です。

かくしてベランダ軒天の雨漏りは軽視され、塗膜が多少浮いたり剥がれたりしても生活に支障が無いうちは放置されていたりするのです。でも、それでいいのでしょうか?

少なからず鉄筋コンクリートであれば内部の鉄筋への影響が懸念されます。爆裂が発生する可能性が高まり同時に剥離落下の危険も増えます。また、塗膜の剥離も進行します。いくら強靭な塗膜だとしても裏側から浸水されてはたちどころに剥がれてしまいます。そうなると、建物の見た目にも良くありません。また、部分補修しても周辺と色が合わない場合、残念な状況になったりします。

建物を守るという観点から見れば、庇やベランダの防水こそしっかりした防水仕様を選定するべきだと考えます。そして、簡易仕様なものほどメンテナンスが重要になってくるのではないでしょうか。

 

モルタル仕上げが雨漏りを助長している?

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テナントさんが入れ替わるタイミングで内装を解体したところ雨漏りらしき形跡があったという事でお呼びが掛かりました。

状況確認に訪れた日は朝まで雨が降っていたためちょうど壁のクラックから雨漏りしているところを確認出来ました。クラックは外部へ貫通しているようで雨が室内側に流れ出ています。エフロの様子から察するに以前から雨は浸入していたようです。

こう言ってはなんですが、鉄筋コンクリート造の壁のクラックからこれだけの水量が室内側に入り込む事はそんなに多くないと思います。でも、実際に目の当たりにしているのですから疑う余地はありません。

強いて言えば外壁はモルタル塗りでした。築年数は30年以上でしょうか。外壁モルタルと躯体コンクリートの隙間(浮き)に雨が浸入した場合、隙間内で行き場を失った雨水がクラックから室内側に移動してくる事が考えられます。

逆にモルタルが無ければこれほどまでに雨は浸入して来ないと思われます。外壁面を流れるだけでは浸透圧が上がらないからです。最近の鉄筋コンクリート造の建物では写真のように雨が浸入して来ないのはそのためだと考えます。経路の遮断、浮きの補修、そして浸入口の修繕が必要です。

読んで字の如く 「水切り目地の働き」とは

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RC(鉄筋コンクリート)造のイメージは?と聞かれて何を思い浮かべるでしょう。「固い」、「丈夫そう」、「重厚感(重い)」、「建築費が嵩みそう」、などいろいろ感じると思います。しかし、そういった見た目のイメージの割には自由な形状のRCの建物が多く見受けられます。ドーム状の屋根や曲線を強調した外観など多種多様な設計が試され建築されて来ました。

昨今は木造建築に於いても奇抜な形や素材を駆使した建物が流行っていたりしますが、RC造と比較した場合、どちらかと言えば木造建築は日本古来の仕様を踏襲しています。その中の一つが雨仕舞だと思います。決して省いてはならない工程や納まりがそこにはあって、細部においても全体においても建物の形そのものが機能的に働いていると言えるでしょう。特に雨仕舞は建物を雨から護る知恵であり末永く住むためには必要不可欠なもので未来まで伝えていかなくてはなりません。

ところが、RCの建築物は強度や法規的に問題が無ければ形状は自由だと言えます。強いて言えば変わった形はコストが増すのでオーナーさんの同意というハードルを越えなくてはなりません。それさえ越えればあとは型枠大工さんの腕でどうにでもどんな形でも作れるという訳です。

その時、忘れてははならないものの一つに水切り目地の適所取付けがあります。上の写真はとあるマンションの解放廊下の天井ですが雨の影響で塗膜や躯体に悪影響が出ています。液体には表面張力がありますので水平な天井では風の手助けなどもあって内部寄りに天井を伝わって来ます。その繰り返しで塗膜が剥がれたりしているのですが原因は水切り目地が無いという事です。

水切り目地とは呼んで字の如く水をそこで切る為の目地です。下の写真では水切り目地の働きによって水が内側に寄って来ていない事が確認できます。

DSC01855※写真をクリックすると動画が見れます

忘れてはならないものや省いてはいけないものってありますよね。個性豊かという名のもとに形や見た目だけに捕らわれた建物だけはご勘弁を。

 

真空コンクリート防水?

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真空コンクリートって通常のコンクリートと比較して圧縮強度が高くなる効果があるといいます。他にも密度が増加し防水性が向上するらしいし、吸水性の改善、クラック発生の低減効果も・・・、それって最高の防水下地ですよね。というか防水コンクリートのようにも感じられます。

誰か試してもらえませんか? 陸屋根で。

報告はこちら ↴

エラー: コンタクトフォームが見つかりません。

株式会社建水プロテクト|東京都練馬区の雨漏りと防水を考える会社

関連サイト

 

避難ハッチを取り付ける床面との適性寸法とは

DSC03692

ベランダ部分での雨漏りクレームで「雨漏りで洗濯物が干せない」というのがあります。その原因の一つが避難ハッチからの雨漏りです。避難ハッチからの雨漏りはその原因により外枠の外側(躯体側)から滴る場合と外枠の内側(はしご収納側)から滴る場合、またはその両方からがあります。

外部に取り付ける建材の多くは雨の影響を考慮してその形状を工夫していますが、忌憚なく申し上げますと設備関係の部材はその配慮が少し欠けているように見受けられます。例えば、屋上にある排水通気管。この部材は防水の納まりを考慮しており水切り部材が取り付けられています。製品によっては防水材の付着にも配慮されたものがあります。

排水通気

そんな配慮は当たり前だと思われるかもしれませんが、雨に対して何にも考えていない製品は沢山あります。どこの何とは言いませんが。よって、取り付ける人は雨仕舞に日々頭を捻る事になるのです。その時、雨仕舞の知識が不足していると後々苦労する結果になるという訳です。

さて、避難ハッチはどうでしょうか。

おおよそ下図のような断面になっています。(メーカーによって違います)

はっち断面

上蓋の近くに水切りっぽい金物が一周していますが、通常は下図のような収め方をしてしまうので水切の役目は果たせていません。これは、ベランダを使用するにあたって、なるべく床面との段差を無くしたいという考えも反映するからなのだと思いますが、取付け強度的にコンクリートとの接触面があまりにも少なくなり過ぎないように設置しようとした結果なのではないでしょうか。

という事は、水切りはいつになっても水切りの使命をまっとう出来ないと思われます。では、どうしますか?

はっち断面2

水切り(私が勝手に呼んでるだけですが)の効果を有効に機能させつつ取付け強度を確保するためには下図のような製品が良いかもしれません。もしかしたら、既にどこかにあるのかもしれませんが。

はっち3

しかし、上図のように取り付けられたとしても、それはそれでベランダの使い勝手は確実に悪くなりますしつまづく危険も増えると思います。また、実際に設置するベランダは十分な設置面積が無い場合が多いため、せめて床面との段差を少なく取り付けなくては気の毒だという心理があると思います。

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「いつ使うか分からないのにすごくじゃま」 しかも 「使う前に錆びついてる」 更に 「雨漏りする」

「いざという時に備えるため無いのは困る」

天秤に掛ける事は出来ませんね。最近はステンレス製になっていますのでこのような悩みも少しは減ってくるのでしょう。古いものは消防署の指示に従い適時改修用ハッチに交換しましょう。

DSC02287

エラー: コンタクトフォームが見つかりません。

株式会社建水プロテクト|東京都練馬区の雨漏りと防水を考える会社

(ハシゴ込みで¥89,000でいかがでしょう! 税別・諸経費別です。)

雨はさっさと流す。溜めない。澱ませない。

DSC07459

いい天気ですね。
こういう日は屋根に上ると気持ちがいいものです。
今日は防水の現状確認と採寸のためRCの建物の屋上に来ています。

一般的に防水工事の単価は市場原理によって大きな差は無いと言われています。しかし、建物の状況はそれぞれ違う為、防水作業前に行わなくてはならない下地処理作業もそれぞれ異なる訳です。

同じ防水工事を行うとして数社から見積もりを取った時に金額に差が出るのはこの下地処理部分の差だと考えられます。

しっかりとした下地処理を提案する会社ほど工事費は当然かさむ傾向があるのですが、オーナーさんがその部分に対してどのようなお考えをお持ちかによって業者の選定結果は異なります。

しっかりとした下地処理を行い建物をより永く使用できるようにと提案する業者ほど胡散臭がられる事になったりもしているかもしれません。逆に大した下地処理もしない為価格がお安く口が達者な業者さんほど世に蔓延ってしまうのかもしれません。

最初の改修工事ではなかなか業者の良し悪しも分かりにくいかもしれませんが説明が腑に落ちる業者さんを選ぶ事がこれからは大切なのではないでしょうか。

さて、写真の屋根には最初から防水層が存在しません。コンクリート素地のままなのです。築20年以上経過していますが雨漏りは有りません。少し爆裂が発生しているぐらいです。防水層が無いから膨れたり捲れたりもしません。発想がすごい素晴らしい工法だと私は思います。

流石に劣化が進んできているという事で防水工事の話しが出てきたわけですが劣化部分の補修を行えばしばらくこのままでも行けるのかもしれませんね。コンクリート強化剤などで復活させられればいいなと考えています。

よく見ると一般的なRCの陸屋根と比較して水勾配がしっかり確保されていてコンクリート面に雨が長らく澱む事は無いようです。いわゆる水切れが良い状態なのです。これはまさに雨仕舞の考え方です。雨はさっさと流す。溜めない。澱ませない。よって、水分の影響が少なく、結果下地も劣化しにくいという事なのです。

何でもかんでも防水に頼らなくても雨仕舞で解決出来る部分が建物にはまだまだ沢山あるのではないでしょうか。だって、昔は防水なんて無かったのですから。

そもそも打継は雨漏りの原因に成り得るのか? ~パラペット編~

伸縮目地とか収縮目地とかエラスタイトといった名称を聞いたことがあると思います。一般的に陸屋根の押えコンクリート内に布設する事で知られています。周辺コンクリートの収縮による挙動を吸収分散してくれる仕事を受け持っています。では、その伸縮目地が無いとどうなるか?

PP

最悪の場合パラペット部分が外部に押し出されます。また、挙動により内部の防水層が破断する可能性があります。元々は防水層の保護の為に打設されたコンクリートが仇になるパターンと言えるでしょう。伸縮目地は規定の間隔で効率的に配置しなくてはその効果が発揮できませんので先々を見据えて適切な取付けを行わなくてはならないと思います。しかし、不運な事に昨今の夏の暑さは尋常ではなく一昔前の最高気温は参考にならず、今後の気候の変動まで読み解く事は現実には不可能ですので、安全率を設定する他に手立ては無いのかもしれません。

運悪く入隅付近の防水層が破断してしまい雨水が防水層から漏れ出した場合、浸出水は内部側に向かうものもあるでしょうが比較的近い打継面からも流れ出します。打継目地のシーリング材も内部から圧力が継続的に掛かる場合は水圧や水分の影響で接着面が剥離し滞留水は外部に流れ出します。いわゆる水路(みずみち)が出来てしまいます。外部からではなく内側から外側に浸出するケースです。雨天時は陸屋根側(内部側)の水圧が高くなるので外壁面からの雨水の浸入は困難だと考えられます。下階の雨漏りの原因がこのケースの場合、不具合箇所の特定は困難ですし、それ故に部分補修はほぼ不可能です。挙動対策や膨れ対策を考慮した新規防水層の検討を始めなければならないという事になるのではないでしょうか。

最近の新築工事では押えコンクリート工法自体は減少しているように感じます。しかし、問題は押えコンクリートを下地にする新設防水の仕様です。下地である押えコンクリートがどの程度伸縮(挙動)するのか?密着工法では対応出来ない事は明らかですがAV工法であれば大丈夫なのか?いずれ問題になってくるのかもしれませんね。

~番外編~ に続く     (番外編は「雨漏り110番練馬店」の施工事例で)

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そもそも打継は雨漏りの原因に成り得るのか? ~基礎編~

基礎編

基礎に於けるコンクリート打設の方法は上図のように主に2種類に分かれます(※他にもあります)。基礎の外部には通常土などが存在していますが雨が降ると地中含水量が増え建物側への浸透圧も増大します。考え方によってはプールの中に浮いているような意味合いに近づくと言えるでしょう。そこが一般の外壁とは大きく違う環境と言えます(もはや通常の雨漏り事象ではくくれない状況です)。地域によっては地下水位が常時高く、常に水分量が多い状況かもしれません。よって、基礎内のエリアに雨水が浸入したからといって一概に雨漏りと判別できない事は言うまでもありません。

さて、そのように厳しい状況の中での止水対策はどのようになされるのが良いのでしょうか。特に下部に存在する「打継ぎ1⃣」部分には止水版やそれに類するものが仕込まれています。以前述べましたが打継ぎのコンクリート同士は融合しませんので物理的に水をくい止める施策が必要です。その代表的なものが止水版なのですが今回は詳しい話は割愛致します。問題は【B工法】の「打継2⃣」部分です。この部分には止水版を入れない場合が多いとの事。図では分かりにくいのですが、実際は鉄筋の配筋状況から考えてもその位置に止水版を仕込むことはかなり困難だと言えるからです。そこに盲点があります。周辺の地盤面が【B工法】の「打継2⃣」より高い場合は当然浸水の確率が上がる事になります。知らないうちに基礎ピットに水が溜まっているパターンではまずここを疑ってみるとよいのではないでしょうか。

では、何故、皆【A工法】を採用しないのでしょうか?わざわざ打継部分を増やす事はないと思うのですが。
理由の一つに地中梁の型枠の敵寸加工及び型枠の撤去や搬出などの関連があります。また、建築設備の関係や工期なども工法選択の理由になってきますが詳しい事についてはまたの機会に致します。ポイントは【B工法】の「打継2⃣」部分の止水処理が甘くなるという事です。まず、止水版が無い、打継目地を作ってない事が多いのでシーリング処理も出来ない、事後処理がセメント系の止水処理を面施工する事が多く止水効果が小さくなる、などが懸念されます。造る人も調べる人も地面付近の打継ぎにはご注意下さい。

~パラペット編~ に続く

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そもそも打継ぎは雨漏りの原因に成り得るのか? ~後編~

打継雨漏り 【図3】

上図のような打継があります。左図は梁型を室内側に影響しないように外部に設計配置した外梁タイプの納まりです。右図はセットバック等の理由で外壁がスラブ上から立ち上がるパターンの場合です。この場合、内部に向かう浸透圧は雨量と経過時間によってはかなり高まりますので雨漏りに発展する場合があります。水平面で雨を受けてしまうという最悪の形状と言えます。雨仕舞には細心の注意が必要です。

さて、話は前回に戻ります。下図を再度ご確認下さい。

打継拡大

外壁垂直面が上下階に渡り連続する上図の場合の雨漏りの可能性を考えた時、【図3】と比較すると浸水の確率はかなり減ると考えられます。仮にシーリング材の防水性能が既に無くなっていたとしても室内側に浸出する例は少ないのです。もちろん無い訳ではありませんので誤解なきようにお願い致します。打継といってもいろんなパターンがありますので、打継からの雨漏りを疑う場合は事前に図面などで周辺の納まりを確認する事をお勧め致します。いずれにしても被疑箇所としての優先順位は高いとは言えないのではないでしょうか。まずは、開口部やスリーブなどから検討した方が順当だと考える次第。皆さんはどう思いますか?

基礎編に続く

そもそも打継ぎは雨漏りの原因に成り得るのか? ~前編~

打継

上図着色部分が一般的な1回で打設する躯体コンクリート部分です。ベランダなどの手すりを一体で打設するかどうかは現場の状況により判断されますが図のように打設する場合が多いようです。コンクリートは1層(1フロア)づつ築造する訳ですから必ず継ぎ目が出来ます。コンクリートの継ぎ目は融合しませんので物理的な止水処理を行う事が前提になります。よって、コンクリートの打継部分の外部側には打継目地を設けます。特に外壁垂直面が上下階に渡り連続する上図のような納まりの場合は外壁面を雨水が流れて来る事が想定されますので打継目地のシーリングの責任は重大です。打継目地は型枠に目地棒を取り付け、型枠と目地棒を外すと目地が出来上がっている次第。その打継目地には、仕上げが塗装の場合はシーリング(ポリウレタン系)を行った後仕上げ塗装をします【図1】。仕上げがタイル貼りの場合は捨て打ちシーリング(ポリウレタン系)を行いタイル貼りの後化粧シーリング(変成シリコン系等)を施します【図2】。タイル仕上げの場合、経年劣化の影響による捨て打ちシーリングの剥離などが確認しにくいという欠点があります。雨漏りの原因がそこにあった場合は発見するのに手こずる事が想定されます。

打継拡大

室内の床付近から雨漏りがあった時に外部の打継目地のシーリングを打ち替えたり打継目地周辺にシーリングを重ねまくっているのをたまに見かけますがはたして打継目地のシーリングが劣化もしくは破断する事が原因で雨漏りは発生するのでしょうか?確かにコンクリートの打継面は水が浸み込む程度の隙間はあります。しかし、その雨水は本当にコンクリートの隙間を水平に移動してきたのでしょうか?上から下に降る雨にそこまでの浸透圧があるのでしょうか?強風で押し込まれるのでしょうか?シーリングが劣化した打継目地なんて世の中に数えられないくらいあるのでは?その全てで雨漏りは発生しているのでしょうか?それとも気づかない程度に浸み込んでいるのでしょうか?皆さんはどう思いますか?

続きは後編で

 

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乾式石貼り工法の雨仕舞

 

外装が石貼り(乾式工法)の建物でサッシ上からの雨漏りがありました。石とコンクリートの間には50mm以上の空洞がある為、石目地の劣化に伴う直接的な雨漏りは考えにくい状況です。石目地のシーリングの劣化に伴い雨水がその空洞内を落下します。マグサ部分で水溜りになったと思われる雨水はサッシ側にも移動します。石とサッシの高さの具合にもよりますが今回はサッシの上部を雨水がモルタルに浸透して移動したと思われます。

石貼り雨漏り

開口部が無ければ空洞に浸水した雨水は最下階まで流れるだけでしょう。今回はマグサ部分に雨が滞留した事が原因なのですがその雨水を自然に排出できる水抜きがあれば室内には雨漏りしなかったと考えられます。サッシと石の取合いにあるシーリング部分は雨水が自然に入り込む可能性は低いと思われますので、あえてシーリングを打たないという選択も考慮した方がよいかもしれません。また、上図のように石の段差部分は雨水が ‟引っかかる” ため雨仕舞的にはお勧め出来ません。入りにくい形、排出しやすい形、石貼りでも雨仕舞を怠る事なかれ。

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株式会社 建水プロテクト

 

コンクリートの話(2) ~【大事は蟻の穴より漏る】~

コンクリートの中には何があるのでしょうか?鉄筋やスペーサーはもちろんですが、電気設備関係の配管や埋め込みBOX、各種下地用のアンカー類、仮設類を支持させる金物、給排水設備や吸排気関係そして墨出し作業に必要なスリーブ類等も埋め込まれています。これらを適切な位置に配置するため事前に検討された図面を元に配筋作業の合間を縫って取付けたり配置したりするのですが、配筋作業の前に行うものと配筋作業が完了しないと取付けられないものなどがある為取付けのタイミングを日々の工程打合せで確認しながら進行していきます。

コンクリート打設前

それでも取付け忘れや位置間違いなども発生する事はあります。そういった場合リカバリーの方法も確立されてたりはしますが実際の作業方法は担当者の裁量に委ねられているのが実情だと思われます。例えば壁面の吸排気用に取り付けたスリーブの位置がずれていた場合、正規の位置に新たに穴を設けなければならないのと同時に間違った穴は塞がなくてはなりませんが単純にモルタルを詰めただけでは後々モルタルの収縮等の理由でコンクリートとの間に隙間が生じ雨漏りに発展したりします。不幸にしてそういった不手際が原因の雨漏りに遭遇した場合、推測の段階では散水箇所から外れる事が多く私達も発見にかなり手間取ったりします。本来、コンクリートの開口部(窓、扉、設備等に関する各種開口部)と言われる部分には周辺に補強筋を取り付けなければならないと決まっていますのでコンクリートに後から穴を開ける行為は基本的には不可です。後から鉄筋を埋め込む事は出来ませんので。

位置間違いや取付け忘れは100%人為的原因ですので是非とも慎重な事前打合せと確認が望まれるところです。新築工事は工期がとても重要なのはわかりますが手直しする場合の時間や労力の方が数倍大変になる事も事実です。事前に少しづつでも確認の時間を組み込んでいければ間違いや勘違いは減らせると感じます。「大事は蟻の穴より漏る」、引き締めていきましょう。

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株式会社 建水プロテクト

 

あの出窓

DSCF5644  まずは散水調査で位置を特定します。

 

DSCF5621

外部はこんな感じです。タイル目地にひびが発生しています。原因としては挙動や収縮に伴う躯体コンクリートとサッシ埋モルタルの継ぎ目付近の剥離やひび割れと共にタイル目地まで割れてしまった事です。ひびから壁内に侵入した雨水は呑み込みの浅いサッシ立上りの奥まで到達してから室内に落下したようです。

 

DSCF5650

斫ると立上りの端末が確認出来ます。周辺のモルタルの裏に雨が入るようです。

 

DSCF5654

取り急ぎ仮補修しておきます。採寸して板金加工を待ちます。

 

DSCF6378  躯体に到達するまで溝切りします。

 

DSCF6388

糊を併用しつつ板金カバーを取り付けます。上端は躯体コンクリートまで到達させます。

 

DSCF6393 DSCF6394 DSCF6395  各所納まりです。匠の技です。

 

DSCF6403  穿孔してビス止めします。

 

DSCF6437  プライマー塗布後シーリング打設します。

 

DSCF6427

完成です。シーリングの色もバッチリです!念のため両サイドは水が抜けるようにしてあります。

 

この後確認散水を行い改善が確認されました。この方法で再発した事例は今のところありません。今回はコンクリート造でしたがALC造も同様の納まりで改善する事が可能です。注意点としては、出窓と板金の取り合いが今後の挙動によりシーリング破断する可能性があります。もしも強力な風雨がシーリング破断箇所に吹きつけたとしても既存タイル(または捨てシーリング)があるので出窓の立上りを乗り越える事は考えにくいでしょう。但し、定期的にシーリングの状況確認と適時の補修を行う事が肝要だと考えます。

 

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コンクリートの話(1) ~【奇跡の一致】~

‟生コン”とはいわゆる「レディーミクストコンクリート」(ready mixed concrete)の事であり固まる前の状態を差しますが、一般的に話題となる‟コンクリート”とは固まった状態のものを言います。あまり専門的な事までは知識不足なため語る事はできませんが建築関係では主に圧縮力をコンクリートが、引張力を鉄筋が負担しています。コンクリート単体では建築物としての強度は著しく弱いものですが鉄筋を併用する事で強靭な建築が可能になっています。この組み合わせは【奇跡の一致】と言われています。コンクリートも鉄筋も外気温の変動に伴い膨張したり収縮したりしているのですが、両者の熱膨張率が異なっている場合はお互いの動きに追従出来ずにコンクリートは内部から破壊されます。しかし、両者の熱膨張率はほとんど同じだったため破壊は起きず構造物として永く存在出来るという事なのです。金属は種類によって膨張率が異なりますが強度の見込める鉄の膨張率だけがコンクリートと同じだった事は自然の事とはいえ人類にとってはとても幸運だったと言えるでしょう。鉄の錆は酸素に触れる事で発生しますが、コンクリートが密着している状態であれば錆の発生も抑えられます。元々、コンクリートは強アルカリ性なので鉄筋の表面に不働態被膜というものを形成する事で長期間鉄筋を錆から守れるらしいです。【熱膨張率の一致】、【圧縮力担当と引張力担当】、【強アルカリにより鉄の弱点を克服】、これらの偶然が重なって初めて鉄筋コンクリート造というものが成立し、現代の人類発展の礎となったという訳です。

ちなみに、コンクリートのアルカリ性は非常に強く、私が現場監督の少年兵時代にその事を知らずに素手で生コンに触れていたところ、翌日から徐々に手の皮膚が剥がれ始め、数日で両手全部が脱皮?しました。(笑) 痛みなどはありませんでしたがかなり驚いた事を記憶しております。ピーリングのハードバージョンみたいなものでしょうか。おかげでしばらく手はツルツルで綺麗でした。酸も怖いですがアルカリもやばいなと感じた出来事でした。皆さんも生コンには気をつけて下さいね。

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