タイル目地神話:目地セメントは雨を通さない?

外壁

タイル目地=目地セメント

 建物にタイルを貼る仕上げの場合、通常はタイルとタイルの間の隙間(目地)を「目地セメント」で埋めて仕上げる。※目地を埋めない仕様もある。
目地セメントに於ける「セメント」と言われる材料に関してはモルタルやコンクリートに使用しているものと変わりはないが、それぞれの使い勝手に合わせて混ぜこむ混和剤や骨材、そしてその配合比は異なっている。基本的には水分と反応して固化する性質の材料である。

 その目地セメントで埋めるタイル間の推奨目地巾の多くは5㎜~10㎜程度となっている。使用するタイルの大きさや種類、また、タイルサイズのバラツキに対応するためにおおよその目地巾は決まっている。例えば、『45二丁掛け(よんごうにちょうがけ)タイル』というタイルのサイズは95㎜×45㎜であるが、その推奨目地巾は5㎜であり、目地込みの寸法は100㎜×50㎜となっていることが多い。また、『二丁掛け(にちょうがけ)タイル』はタイルサイズが227㎜×60㎜で、推奨目地巾は8㎜~10㎜が多い。目地込みの寸法は約235㎜×約68㎜となっている。『小口(こぐち)タイル』は二丁掛けタイルの約半分のサイズ108㎜×60㎜であり、二丁掛けタイルと小口タイルはいずれもレンガのサイズが基準になっている。他にタイルの種類は沢山あるが、日本では前出のものが多く用いられている。
余談ではあるが、建物の寸法を測る時、45二丁掛けタイルの枚数を数えるとおおよその寸法が読み取れたりする。

目地セメントの止水効果

 そういったタイル間の目地を埋めている目地セメントに止水能力はあるのだろうか?
「えっ⁈無いの?」と思われる方もいるかもしれない。結論から言えば、「新築当初は少し有る」という感じではないだろうか。ほとんどの人は気にもしていないと思うが、雨の日にタイルの外壁をまじまじと近くで見てみると目地部分が濡れて色が濃くなっている様子がわかる。いわゆる「濡れ色」になっているはずだ。目地セメントには、施工時の扱いやすさ(埋めやすさ)を考慮して珪砂という砂状の骨材が多く練り込まれているためセメント成分が少ない組成になっていて、比較的に水分は浸透しやすい。新築当初は混和剤などの影響で撥水効果もあったりするのだが経年的に中性化が進行するとパサパサのスカスカになってしまい、雨の当たり具合が強い場所では影響で目地セメントが浸食され、最悪の場合は目地セメントがすっかり無くなってしまっている場合も珍しくない。特に45二丁掛けタイルの5㎜目地を埋めている目地セメントの止水効果は絶望的に期待できない。逆に目地鏝により押えつけながら目地を埋めるタイプの二丁掛けタイルの押し目地(目地巾8~10㎜)の方は45二丁掛けタイルの5㎜目地よりは期待が持てる。

浸入箇所は目地セメントだけではない

 目地セメント自体以外にも雨はタイル仕上げ面を透過している(タイル自体を透過することは無い)。それは、目地セメントとタイルとの接合面である。タイルや目地セメントは太陽の陽射しや外気温の影響により絶えず収縮を繰り返している。そして、部材ごとにその収縮率が異なっているため、それぞれの接合面では剥離現象が発生することになる。それがコンクリート造の躯体面で発生すると「浮き」となって不具合リストに入ることになる。コンクリート⇄タイル、タイル⇄目地セメント、目地セメント⇄コンクリートなど、それぞれの部位同士が異なる収縮率で挙動していて目視では確認できずとも小さな剥離や破断は生じている。夏は表面温度が50℃を超えたり、冬は零下となる日本の季節の中でその挙動の発生を思い浮かべることは想像に難くはない。加えて、そもそもタイル目地自体が緩衝材としての役割を担っているということでも分かるように、タイルと目地セメントは密着状態に無いと考えて然るべきである。定位置に納まってはいるものの一体になっているとは言い難く、雨水が透過してしまう程度の隙間は数多存在していると考えるべきである。
以上のことから最悪の場合、45二丁掛けタイル外壁では、1㎡辺りの目地が占める面積(0.145㎡=14.5%)分は雨の浸入口となる可能性があるということになる。ついては、タイル下地となる躯体のコンクリートやALCパネル、モルタルなどにひび割れなどが無いことを祈るばかりである。

出窓上の外壁タイルを剥がすとシーリング材の劣化やALCパネルのひび割れが確認された様子➔この案件の雨漏り原因の一つ

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