「東京屋根雨漏り修理事情」

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四六時中雨漏りに携わっていると、自ずと多種多様な建物と関わることになる。時には見たことも聞いた事もないような素材や変わった納め方に出会うものである。新素材や独自工法を否定することは出来ないがそれが雨漏りの原因だった場合はやはり意匠優先の設計を行ってしまったのだろうと残念に感じずにはいられない。その度に思うことは、古くからの雨仕舞を尊重した建物は、やはり不具合が出にくく快適で永く住めるものなのだということである。

その不具合の一つが雨漏りであるが、住宅の定義とも言える居住者の快適な生活を壊す難題の最たるものだろう。厄介なことに雨漏りの原因箇所は建物全ての部位にその可能性があると言っても過言ではないほどいろんな部位から雨は浸入してくる。中には新築当初から発生している場合もあり施工の品質が大きく問われるところでもある。その場合、施工業者に改善を求めることになるがこれがなかなか解決せず悩みを肥大化させる時もあるようだ。(※参照記事:「どうして工務店は雨漏りを止められないのか?」

施工不良はさておき、経年劣化による雨漏りの代表格はやはり「屋根」だと思う。
屋根は、木造の場合、建て方(棟上げ)後、最初に作られる部位なので、建物の外装の中で一番最初から天日に曝され、雨風の影響を被っている。その日から休むことなく紫外線や熱射や雨風や地震の揺れなどに耐えているのだ。とりわけ日射と雨の影響は他の部位とは比較にならないほど大きいので劣化止む無しかもしれない。

屋根は建物の寿命を左右しているといっても過言ではないほど重要な部位なのだ。逆に捉えれば、屋根の状況を良好に保つことが建物の寿命を延ばすことになるとも言えるだろう。そして、屋根の状況を良好に保つ条件として小屋裏環境を良好に保つことも同じくらい重要である。屋根の内外は密接に影響しあっているので何らかの問題が発生している場合は双方同時に環境改善を検討する必要があるかもしれない。

雨漏りの確認時や調査時に屋根を拝見したときに、明らかに屋根外装の劣化が進んでいて、雨漏り原因箇所周辺だけの修繕提案で良いのかどうかを迷うことが多くある。例えば、コロニアル葺きに代表されるようなスレート屋根の場合、実は「葺き替え」を薦めなくてはならないような場合でも「塗装」を提案してしまうことがある。

築年数が20年以上の木造建築で、過去に数回の塗り替えでスレートは保護されていたとしても、やはり素材本体の劣化は進行しているであろうし二次防水である屋根ルーフィング材も限界に近付いてるであろう事は実際にスレートを撤去して目視せずとも想像に難くはない。
しかし、だからと言って“葺き替え”を提案しようにも見た目の様子に不具合を論じる要素が少ないためなかなか理解を得にくい。結果、今回だけは“塗装”ということに落ち着いてしまうのだ。せめてタスペーサー(通気緩衝材)などを取り付けてはみるのだが。

よって、その塗装後にも雨漏りに発展する要因は残され続けることになる。コロニアルの下面では今も雨の度に雨水が流れていて、いつ何時ルーフィングに綻びが発生するかは知る由もないのだ。

一般的に陸屋根の塗膜防水やシート系防水は修繕を繰り返しながら10年から20年も経過すると交換したりカバー工法などで改善するのが当たり前になりつつあるのに、いわゆる屋根に関してはそのサイクルで葺き替えたりカバー工法で改修する人は比較的に少ないと言える。それは、工事費の問題もあるとは思うが一番の原因は「劣化が見えない」からではないだろうか。

陸屋根の塗膜防水(押え仕様を除く)は膨れたり破断しているとすぐに気付く。事が起きる前にそろそろ修繕しようと考える。同じくシート防水(押え仕様を除く)も劣化がすぐに目視できる。しかし、瓦屋根やスレート屋根などの二次防水であるルーフィング材は通常は目につかない。例え酷く劣化していても雨漏りでも起きない限り人は行動しないのかもしれない。

私たちは雨漏りに携わる者として、たとえ逆効果になろうとも現状を正しく伝え今後起こりうる可能性を説明していくだろう。それが最善の結果につながらなかったとしても真実を伝える努力を怠ってはならない。

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